被爆地・長崎で平和を考えるイベント刷新、会議形式から「音楽フェス」に…被爆3世ら記憶継承プロデュース
原爆投下から79年が経過し、記憶の継承が課題となる中、音楽ライブなどを通して平和を考える「地球市民フェス2024」が23、24日、長崎市内で初めて開催される。これまでの会議形式のイベントを、被爆3世ら若者が中心となり、幅広い世代が参加しやすいように衣替えした。関係者は「長崎が育んできた平和の価値を感じる日にしてほしい」と願う。(勢島康士朗) 【写真】「生まれ変わった」長崎に響く福山雅治さんの歌…長崎スタジアムシティ開業彩る無料ライブ
長崎県や長崎大などでつくる「核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会」が主催し、2000年以降、国際会議を3~5年の間隔で計6回実施してきた。核兵器廃絶や被爆の実相の継承に関する講演や分科会が行われ、被爆者や専門家らが意見を交わしてきた。
「明確な目的を持って議論ができる意義のある会議」(実行委)との声がある一方、参加者は次第に減少。最も多かった第2回は延べ約6700人だったが、18年の第6回は延べ約3600人だった。実行委員長で、長崎市の被爆医師、朝長万左男さん(81)は「幅広い世代で核兵器廃絶のためにできることを考えるのが本来の目的だが、達成できない」と刷新を決めた。
「若い力を貸してほしい」。朝長さんは約1年前、長崎市で平和教育を展開する一般社団法人の代表理事、林田光弘さん(32)に声をかけた。被爆3世の林田さんは高校時代から核廃絶に向けた署名活動に参加してきた。「被爆者が生きている今、そのメッセージを残し、誰もが地球市民として行動していくための機会を作りたい」と総合プロデューサーを引き受けた。
フェスでは親子連れや若者らをターゲットにする。会場を長崎原爆資料館などから、今秋に開業した長崎スタジアムシティに変更。歌手の加藤登紀子さんやヒップホップグループの「スチャダラパー」などによる音楽ライブを中心に据え、その合間に被爆者らがトークセッションを行う。被爆者と少人数で語る催しやサッカー教室も開催する。
今年のノーベル平和賞に「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が選ばれ、被爆者への関心は高まっている。林田さんは「この機運を一過性のものではなく永続的なものにしていくためにも、行政や企業、団体、幅広い年代の人々が集まり、できることを考える機会にしたい」と意気込む。