【米大統領選2024】 マスク氏による有権者への100万ドル贈与、司法省が違法の疑い警告
世界一の富豪のイーロン・マスク氏が宝くじ形式で毎日1人の米登録有権者に100万ドル(約1億5000万円)を贈っていることについて、連邦選挙法違法の疑いがあると警告する文書を、米司法省がマスク氏の政治活動委員会に送った。複数の米メディアが23日、報じた。 司法省がいつ、マスク氏の政治活動委員会「アメリカPAC」に文書を送ったのかは不明。同省はコメント取材に応じていない。 アメリカの法律では、有権者登録をさせるために金銭を支払うことは違法。だが、今回のような宝くじ形式の金銭提供が法律に違反するかは、明確になっていない。 米電気自動車テスラやソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」を所有するマスク氏は、米大統領選挙で共和党候補となっているドナルド・トランプ前大統領を積極的に支持している。大統領選は、トランプ候補と民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の接戦だとみられている。 マスク氏は先週末、「アメリカPAC」が掲げる憲法支持の請願書に署名した激戦州の有権者に、金銭を配り始めた。 同氏は19日、ペンシルヴェニア州で今回の企画を発表。「激戦州の100万人以上、いや200万人以上の有権者に、憲法修正条項第1条と第2条を支持する請願書に署名してもらいたい」と述べた。 企画のルールでは、「当選者」は有権者登録をしていることが条件。所属政党は問わない。100万ドルの授与は、来月5日の大統領選投票日まで毎日続けると、マスク氏は表明している。 「アメリカPAC」のウェブサイトには、この取り組みの目標について、「激戦州の登録有権者100万人に憲法支持の署名をしてもらうこと。特に言論の自由と武器を持つ権利に関してだ」と書いてある。 この企画の対象は、ペンシルヴェニア、ジョージア、ネヴァダ、アリゾナ、ミシガン、ウィスコンシン、ノースカロライナの激戦7州の有権者となっている。 民主党はこの企画を強く非難し、司法省に対応を求めていた。 ■共和党の元検事たちが捜査要求 共和党を支持する元検事らのグループは22日、マスク氏の取り組みを捜査するよう、司法省に文書で求めた。 同グループは、「現代の政治史上、このようなことがかつてあったか、我々はほかに例を知らない」とし、連邦法および州法違反の疑いを指摘。「選挙の直前に、国民の投票行動に影響を与えるかもしれない対応について、捜査機関が慎重なのは適切なことだだ。だが、投票プロセスを直接規制する法律のもとで重大な問題が生じている場合は、例外でなくてはならない」と主張した。 マスク氏はこれまで、今回の取り組みが違法だとの見方をはねつけ、「(金銭を受け取る人は)どの政党の所属だろうと、無所属だろうと構わない。投票する必要すらない」と主張している。 CNNによると、支払われる金銭を「仕事の報酬」と表現するルール変更が、20日にあったという。 「アメリカPAC」は、当選者は「アメリカPACの広報役として100万ドルを得るために選ばれる」とした。これまでの当選者は、トランプ候補を支持する動画に登場している。 ■専門家の見方分かれる 複数の法律専門家は、マスク氏の取り組みが違法の可能性があるとBBCに話した。 ジョージ・ワシントン大学のポール・シフ・バーマン教授は、「彼の金銭提供は登録有権者のみを対象にしており、規定に抵触すると思う」と説明。選挙法に関する合衆国法典が、「有権者登録や投票のために金銭を支払ったり、支払うと申し出たり、受け取ったり」した者は1万ドルの罰金か禁錮5年の刑を受ける可能性があるとしていることを指摘した。 超党派の組織「キャンペーン・リーガル・センター」のアダヴ・ノーティ氏は、マスク氏の取り組みについて、「連邦法に違反しており、司法省による民事または刑事の法執行の対象となる」と主張。「受取人が有権者として登録することを条件に、金銭を提供するのは違法だ」と述べた。 一方、ノースイースタン大学で法律を教えるジェレミー・ポール氏は、法律の抜け穴をマスク氏が見つけた可能性があると分析。金銭提供は「法律の規定をうまくかわそうとして考え出されたもの」で、その違法性を裁判で立証するのは難しいだろうとの見方を示した。 (英語記事 US warns Musk political group that $1m voter giveaway may be illegal)
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