静岡県知事選告示、新人6氏が届け出 候補者ら第一声 リニア、新球場、人口減、経済対策争点
川勝平太知事の辞職に伴う知事選は9日告示され、午後5時に届け出が締め切られて新人6氏による選挙戦が確定した。立候補したのは諸派の政治団体「個人の尊厳党」代表横山正文氏(56)、共産党県委員長森大介氏(55)=同党公認=、いずれも無所属の元浜松市長鈴木康友氏(66)=立憲民主党、国民民主党推薦=、元副知事大村慎一氏(60)=自民党推薦=、アパート経営村上猛氏(73)、コンサルティング会社社長浜中都己氏(62)で、届け出を済ませるとそれぞれに第一声を発した。投開票は26日で、17日間の論戦がスタートした。 15年ぶりに県政のかじ取り役が変わる今回の知事選は、史上最多の候補者による争いとなった。リニア中央新幹線整備や浜松市の新野球場建設、人口減少対策、経済活性化、浜岡原発再稼働など山積する県政課題を巡って政策論争が繰り広げられる。 森、鈴木、大村の3氏は政党の公認や推薦を受け、与野党対決の構図だが、それぞれに党派や地域を超えて支持拡大を目指す構え。 森氏はJR静岡駅南口で第一声のマイクを握った。リニア中央新幹線整備と中部電力浜岡原発の再稼働に反対の立場を鮮明にし「県民の暮らし、福祉最優先の県政にチェンジする。国と大企業にしっかりと物を言い、行動する知事になる」と集まった聴衆に決意を述べた。 政策の一つとして、小中学校の給食費の無償化を目指すと主張。「150億円あれば実現できる。建設費370億円の(案も出ている)浜松の野球場建設はやめて、子育て支援にお金を思い切って使おう」と呼びかけた。「リニア整備よりも環境と水の保全を優先し、浜岡原発再稼働ノーを掲げる唯一の候補」と強調して他候補との違いをアピールした。 鈴木氏は県東部重視の姿勢を示すため第一声の地にJR沼津駅北口を選んだ。「政治人生の全てを注ぎ込み、混迷する県政を立て直す。幸福度日本一の静岡県をつくる」と声を張り上げた。首都圏に近い東部は潜在的な資源が豊富で「多くの企業を誘致できる」と訴えた。リニア開業により「東海道新幹線の本数が増え、県東部への経済効果をもたらす」とも述べ、整備推進の姿勢を示した。 9日で発生から丸50年を迎えた伊豆半島沖地震や、能登半島地震に触れ、道路網などを整備して「多重で強靱(きょうじん)な半島防災」に取り組むとした。医療資源が不足している東部に医大を誘致し「安心して暮らせる環境をつくる」と訴えた。 大村氏は静岡市葵区で約1500人の聴衆を前にマイクを握った。「身をなげうってまっすぐに県政を立て直したい。その一心で立ち上がった」と決意を述べた。防災、インフラ整備、産業政策、県民の幸せを核とした政策を戦略的に進める「県前進ビジョン」に取り組むとフリップを使って説明。既存事業の効率化と見直しを行い、4年間で新規事業に1千億円の予算を充てると主張した。 リニア問題に関し、大井川流域住民の意見の反映や県のメリットの明確化を進め「1年以内に方向性を示す」と訴えた。浜松市の新野球場を巡り「ドームありきで議論が進んでいる。なぜこの案が出てきたか確認が必要」と強調し、最適な球場の整備を急ぐとした。
静岡新聞社