綱とりの琴桜、手痛い連敗「切り替えます…」 過去、連敗で横綱昇進した例なし/初場所
大相撲初場所3日目(14日、両国国技館)初の「綱とり」に挑む両大関、琴桜(27)は平幕翔猿(32)に引き落とされて2連敗。手痛い2敗目を喫した。豊昇龍(25)は小結若隆景(30)を突き出して3連勝。2場所連続全休明けの横綱照ノ富士(33)は霧島(28)を寄り切って、白星を先行させた。大関大の里(24)は隆の勝(30)を押し出して2勝目。関脇大栄翔(31)は正代(33)を押し出して3連勝とした。 自らの悪手で勝機がこぼれ落ちていく。初の綱とりに挑む大関琴桜が2連敗。序盤で早くも黒星が先行し、いきなり窮地に追い込まれた。 平幕翔猿の動きを警戒したのだろう。立ち合いから腰が引けていた。強く当たらず左腕で抱えにいって、強引な小手投げ。振りほどいて左おっつけから前へ出たが、慌てた足の運びは乱れていた。無理筋の攻め手を連発し、土俵際で引き落とされた。 「切り替えます…」 支度部屋。描いていた15日間の道程が早々に崩れた大関に、語る言葉は残っていなかった。 小結阿炎に初黒星を喫した2日目の夜。千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋へ戻ってから、まわしを締めて稽古場へ下りた。琴桜は納得のいかない相撲を取ると、本場所中でも自戒を込めて一人黙々としこ、てっぽうなどの基礎運動を繰り返す。この日の朝稽古後、「人に言うためにやっているんじゃない。人任せの人生じゃない。自分のことは自分でやるしかない」と気持ちを新たにしていた。 だが、母方の祖父の元横綱琴桜と並ぶ番付最高位へ挑む重圧は、想定を超えていたのかもしれない。土俵下で見守った高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「琴桜は勝負にいっていない。勝ちにいっている」。 1場所15日制が定着した昭和24年以降、33人の横綱が誕生しているが、昇進直前場所で連敗を喫して昇進した力士は皆無。負の連鎖に飲み込まれたら、はい上がってくることができない現実が突きつけられた。それでも、高田川部長は「まだ始まったばかり。あとの全部、自分で引きずり下ろせばいい」。15世紀まで信じられていた天動説に異を唱え、地動説を主張した天文学者、「コペルニクス的転回」の例もある。(奥村展也)