作画崩壊に「笑った」 「事故った」回が長年語り継がれるアニメ
作画崩壊を超えた「ダイナミック作画」
作画崩壊アニメを語るうえで、やはり『DYNAMIC CHORD(ダイナミックコード)』は外せません。同作は音楽事務所兼レコード制作会社「DYNAMIC CHORD」に所属するバンドメンバーたちの苦悩と友情、そして夢への軌跡を描いたアニメ作品です。作中には車内の天井から生えるシートベルトや、歩道にせり出したあり得ない構造のカフェ、部屋のTVより小さくなってしまったキャラクターたちなど、ダイナミックで笑えるタイプの作画崩壊が随所に散りばめられていました。 イケメンなキャラクターやシリアスなストーリーとのギャップも相まって、下手なギャグ作品よりも笑えると話題を集め、「見る抗うつ剤」と称する人もいるようです。また作画崩壊以外にもダイナミックすぎるストーリー展開や、「追いピアノ」に代表される独特なSEの使い方など、見どころは盛りだくさんでした。ちなみに、この作画は作画崩壊を超えた「ダイナミック作画」とも言われており、ちょっとしたミームとして広まりました。 そして最後は、のちのアニメ史に「とある基準」を作ってしまったほど有名な作画崩壊アニメ『夜明け前より瑠璃色な Crescent Love』です。同作は「オーガスト」の大人気美少女ゲームをアニメ化した作品で、2006年の秋クールアニメとして放送されました。 このアニメはたったひとつのとある作画崩壊が、今もなお語り継がれるほどの伝説になっています。というのも第3話の料理対決シーンで、まるでゴム毬のような形のキャベツが登場し、多くのアニメファンに衝撃を与えました。 特筆すべきはのちのアニメ業界への影響で、この「伝説のキャベツ回」が放送されて以降、アニメファンは他のアニメでもキャベツの作画に注目するようになりました。「キャベツの作画が良いアニメは神アニメ」といった風潮まで生まれ、キャベツの作画を吟味することを「キャベツ検定」などと言うネットスラングまで誕生しています。 さらには『ハヤテのごとく!』や『ハッカドール THE あにめ~しょん』、『モンスター娘のいる日常』といった数々のアニメ作品で、キャベツ回のパロディシーンが登場します。また2011年放送のアニメ『THE IDOLM@STER』を筆頭に、キャベツの作画にやたらとこだわる作品が増えた印象です。 とはいえ『コードギアス 反逆のルルーシュ』や『涼宮ハルヒの憂鬱』といった名作ぞろいの2006年に『夜明け前より瑠璃色な』が爪痕を残せたのは、キャベツ回があったからともいえるのではないでしょうか。ネガティブな意味で使われがちな「作画崩壊」ですが、何も悪いことばかりでもないのかもしれません。
ハララ書房