近年稀に見る大接戦。プレミアリーグの優勝争いを福西崇史が解説「苦しい状況でも点を取れる存在は大きなアドバンテージ」
勝ち点で並ぶ2位のリバプールは怪我人の多さに苦しみながらも選手層の厚さで乗り切っています。アカデミーから10代の若い選手も積極的に起用しながらチームとしての戦い方が崩れることがなく、あのサッカースタイルの深い浸透度を感じました。 そのなかでもチームの背骨として支えているのが、フィルジル・ファン・ダイクとイブラヒマ・コナテというリーグ屈指のセンターバックコンビです。危ない場面でも2人がいることでギリギリ凌げている部分もあると思います。 その2人の前で遠藤航がフィルター役となって助け、今では欠かせない戦力になっていることは日本人として誇らしく、嬉しいことです。守備だけでなく、斜めの鋭いパスやワンタッチパスの判断が上がって、最初は苦戦していた攻撃面でも貢献できるようになり、プレーに余裕が出てきたと思います。 守備においてもリバプールのやり方に慣れてきたことで、周りの状況に応じて奪いにいくタイミングが掴めてきました。それによって、思い切って寄せて奪うという遠藤の良さをより発揮できるようになり、先日のマンチェスター・シティ戦でもケビン・デ・ブライネを見事に封じました。 ユルゲン・クロップ監督が今季限りで退任することを発表して、チームは非常にモチベーションが高い状態だと思います。そのモチベーションの高さによってリバプールが抜きん出る可能性も十分にあると思います。 3連覇中のマンチェスター・シティは、今季も相変わらず強い。すべてにおいてレベルが高く、穴を見つけるのが難しいほどです。毎年、選手を適度に入れ替えながらさまざまなタイプの選手を揃えて、チームとしての安定感は群を抜いています。 そのなかでも今季とくに印象的なのはフィル・フォーデンです。ウイングの位置ではドリブルでの打開は止められないし、公式戦で17点とストライカー並みに得点も重ね、アシストも10を記録しています。ベルナルド・シウバがまるで脇役のようになっています。 今季加入のドクもすぐに主力となりましたが、加入直後はコンビネーションにやや若さを感じました。ただ、それもしばらくするとチームのなかでいい使われ方をするようになって、持ち前のキレキレなドリブルがより脅威になっています。 デ・ブライネが長期離脱でいなかったことは、本来であれば非常に厳しいことですが、シティはそれでもなお優勝争いに居続けられるほど、チームのベースが非常に強いことを見せつけてきました。 そして復帰してすぐに王様のような活躍はさすがとしか言いようがありません。ほかの怪我人も戻ってきて、層の厚さ、武器の多さはアーセナルやリバプールと比べてもシティが随一だと思います。 この3クラブはどこが優勝しても納得の強さがあると思いますが、強いて優位だなと思うクラブを挙げるとすればシティだと思います。リーグ終盤においての経験値、選手層はもちろんですが、やはりアーリング・ハーランドの存在は大きいと思います。 リバプールにはモハメド・サラーやダルウィン・ヌニェスがいて、アーセナルにはブカヨ・サカやガブリエウ・ジェズスがいますが、ストライカーとしてはハーランドが別格だと思います。苦しいところでも点を取ってくれる存在がいることは、このタイトルレースにおいて大きなアドバンテージになると思います。 それでもどこが優勝するかは正直わかりません。3月31日に行われる第30節のシティ対アーセナルは、優勝を占う上で重要な一戦です。若くて野心があり、20年ぶりの優勝を狙うアーセナルか、クロップ最後でモチベーションの高いリバプールか、シティが4連覇という偉業達成か。どんな結末を迎えるのか、最後まで楽しみです。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜