<負けて克つ・センバツ鳥取城北>春切符への軌跡/2 精神面の未熟さ露呈 /鳥取
鳥取城北は昨秋の県大会準決勝で境との投手戦に辛勝して中国大会進出を決め、ライバルの米子東との決勝を迎えた。点の取り合いになり、鳥取城北は九回に3点を挙げ10―5と大きくリード。この回に適時打を放ち、後続の安打でホームベースを踏んだ岸野桂大(けいた)捕手(2年)はベンチに戻り「勝ったな」と思った。しかしその裏、チームは窮地に追い込まれる。 マウンドに立っていたのは、六回から3番手で登板した広田周佑(しゅうすけ)投手(2年)。ストライクが入らず先頭打者に四球を出すと、次の打者には甘く入った球を打たれた。とはいえ5点差。岸野捕手は「2点くらいは取られてもいい」と気楽に構えていたが、さらに連打を浴びた。次第に「何を投げさせても打たれる気がした」と頭の中が真っ白になり、単調なリードに陥る。バッテリーを支えるべき内野陣は効果的な声掛けや間合いの取り方ができず、5安打に四死球も絡んで一気に追いつかれた。 畑中未来翔(みくと)主将(2年)は「広田が独りぼっちになっている」と焦り、右翼から内野越しに大声を上げ続けたが、既に試合の流れは相手に渡っていた。十回裏、相手エースが適時打を放ち、10―11でサヨナラ負け。広田投手はホームベース付近でうなだれ、ベンチでは山木博之監督(45)がメガホンを握り締める。選手たちは劇的な優勝を喜ぶ米子東ナインをぼうぜんと見つめるしかなかった。 勢いに乗れば強いが守勢に回るともろく、特に重圧のかかる場面で精神面の弱さが出るチームの課題は明らかだった。山木監督は「練習試合でも1イニングでの大量失点が多く、その癖が抜けなかった」。ピンチで粘れず、悪い流れを変えられない。その隙(すき)をライバルは見逃さなかった。 試合後、山木監督はあえて突き放した。「米子東は常に冷静にプレーしていた。お前たちよりずっと大人の野球だ」。その言葉が意気消沈したナインの心に突き刺さる。先発したが一回で降板した山内龍亜(りゅうあ)投手(2年)は「責任を果たせず、広田たちに負担をかけてしまった」と悔やみ、岸野捕手は「あの油断が負けにつながった」と自分を責めた。 仲間なのに支え合えていなかったことに気付いた今、チームの思いは一つだった。「中国大会までに変わらないと、勝てない」。屈辱的な逆転負けが、1カ月後の中国大会の出発点になった。【野原寛史】