FA人的補償交渉の壁になるサイドレターの存在
過去に、付帯条件を持つビッグネームの前例としては、2005年に巨人が西武からFAで豊田清を獲得した際、江藤智が西武へ移籍したことや、その翌年に横浜から巨人に移籍した門倉健の人的補償で工藤公康が横浜に取られたこともある。 もし球団同士にホットラインがある場合は、事前に「誰が欲しい?」「うちはこの選手を出せるけど?」というトレード交渉のような下交渉がもたれて、プロテクトの28人が決められ、その中で付帯条件も確認されるという。ただ、この人的補償における下交渉は、両球団の担当者同士によほどの信頼関係があるケースに限られる。 過去で言えば、阪神が広島から新井貴浩をFAで獲得した際、入団3年目を終えた赤松真人を人的補償で広島に取られた。今季も赤松は、貴重な代走、外野守備要因として優勝に貢献したが、この時は当時の両チームの編成責任者が、大学の先輩、後輩の関係にあり、下交渉での攻防があった末に、両者納得の上で赤松の人選が決まり、リストが提出されたものだったという。 今回、横浜DeNAの高田GMは巨人OBのため、巨人とは話のできる窓口はあり、楽天にも西武とはホットラインがあるため、下交渉である程度の話は詰められると考えられるが、オリックスと阪神の間はオリックスの編成責任者が夏に変わったこともあって下交渉は難しく、リストを提出してからの“一発勝負”になるとも考えられる。すでに、それを見越してメディアを通じての前哨戦もスタートしているが、それだけにオリックスが狙う選手が、サイドレターを持っていた場合、人選は一筋縄ではいかないかもしれない。 西武から楽天へ移籍した岸は3人のうちで最も早く11月24日に支配下登録公示されたため、7日が西武へのリスト提出期限となっている。阪神は、その翌日の12月8日。当然、リストの中身は公表されないことになっているが、誰が人的補償で移籍するのかに注目が集まっている。