「ビニールハウス」トークイベント付き日本最速上映会の様子。

韓国映画「ビニールハウス」のトークイベント付き日本最速上映会が本日2月29日に東京・シネマート新宿で行われ、主演のキム・ソヒョン、監督のイ・ソルヒが登壇した。 【画像】観客に向け、手でハートマークを作るキム・ソヒョン 本作は少年院にいる息子と再び一緒に暮らすことを夢見ながら、ビニールハウスで生活する女性ムンジョンを主人公にしたサスペンス。引っ越しの資金を稼ぐため訪問介護士として働くムンジョンの日常は、認知症の老婦人の死をきっかけに一転してしまう。彼女はその夫が盲目であることを利用し、認知症の自分の母親を身代わりに据えるが、その決断はさらなる取り返しのつかない悲劇を招き寄せる。 監督のほか、脚本と編集を担当したイ・ソルヒは「（自分と）母と祖母の関係を見たことからこの映画は出発しました。ただそれ以上に、犯罪スリラーを描く作品を作りたかった。年配の俳優が出てくる面白い犯罪モノを撮ってみたいという気持ちがあったんです」と語る。また彼女はキム・ソヒョンについて「多くの話はしてないんです。『ムンジョンはどんなキャラクターか』『こんなふうに演じてください』などの会話はほぼしていません。こんな俳優さんに再び出会えるのかな？と思いました。そのくらい、彼女はムンジョンという人間を深く理解していました」と称賛した。 キム・ソヒョンは「役作りをしなかったわけではありませんが、ムンジョンを深く理解できる気がして、特に準備をする必要がなかったんです」と述懐。続けて「ムンジョンをそのまま自分の中に受け止めようとしました。彼女は不幸に見えるかもしれませんが、現場ではムンジョンの人生を受け入れながら演技をしていましたし、“幸せでいたい”という自分の気持ちを重ねていました」と説明した。 印象的だったエピソードを尋ねられたイ・ソルヒは「ムンジョンは自分の頬をたたくという自傷行為をするキャラクターです。キム・ソヒョンさんは一度も、なぜ彼女が自分の頬をたたくのか聞かなかったんです」と回答。キム・ソヒョンは「この件は、韓国で舞台挨拶をしているときにも質問されましたね。そのとき私は、『何も言えず、何も表現できないよりは、自分のことをたたいているほうがマシだと感じていた』と答えました」と口にした。 イ・ソルヒは、本作の鑑賞を終えたばかりの観客を見渡し「さっきまでキム・ソヒョンさんと私は楽しくおしゃべりしていましたが、登壇すると憂鬱な雰囲気に圧倒されました（笑）」と打ち明ける。キム・ソヒョンは「実は私も、シナリオを読んだ時点で頭が痛くなっていました。試写を初めて観たときはクラクラして頭痛薬を飲みました（笑）」と茶目っ気たっぷりに述べた。イ・ソルヒは「韓国では想像以上に、（本作の）好き嫌いが割れていました。どちらの反応でも、映画をご覧いただいたことに感謝しています。皆さんに貴重な時間を使っていただき感謝しています」と伝える。 本作の演技によって、韓国の映画賞で主演女優賞など6冠に輝いたキム・ソヒョン。彼女は「受賞自体はあくまで監督の力によるもの。素晴らしいシナリオのおかげで賞をいただいたと思っています」と話す。また「今後演じてみたい役は？」という質問に対しては「心の中には目指すものはありますが、思い通りにいくものではないと思う。これまでも、与えられたもの、やると決めたことに全力で取り組んできました」と前置きしつつ、「岩井俊二監督の『Love Letter』が大好きなんです。初恋を描く作品は撮ってみたいです」と明かし、会場からは拍手が巻き起こった。 日本の印象についてキム・ソヒョンは「コロナ前はよく日本に来ていて、今回は7～8年ぶりです。『東京タワー』という映画の記憶が残っているので、必ず東京タワーに立ち寄っています。そしてお寿司が大好きです」とほほえむ。最後に彼女は尾崎豊の「I LOVE YOU」を口ずさみファンを沸かせ、「日本に来て、皆様とお会いでき光栄です。皆さん、いつもお元気で。そして新年の福をたくさん受け取ってください」と呼びかけた。 「ビニールハウス」は、3月15日より東京・シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次ロードショー。 (c)2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED