日銀、追加緩和に踏み切るのか? 金融政策決定会合結果、29日公表
日本銀行は金融政策決定会合を28~29日の日程で行います。大波乱の金融市場の動向を受け、現状を維持するか、追加緩和を行うのか、決定内容の結果は29日の昼頃公表予定。第一生命経済研究所のエコノミスト・藤代宏一さんが、今回の会合結果の予想とその考え方について解説します。
年初からの金融市場の大波乱で追加緩和の期待、一層高まる
2016年の金融市場が大波乱の滑り出しとなったことで、日銀の追加緩和期待が急速に高まっています。そこで、今回は日銀の金融政策を予想するにあたって重視すべきデータ・視点について考えてみます。 日銀の追加緩和を予想する前に、その基本的情報を整理します。日銀は13年4月に発足した黒田体制の下で「2年で2%」という物価目標を掲げ、それを達成する手段として「量的・質的金融緩和」(以下、QQE)を発動しました。QQEはしばしば異次元緩和と呼ばれるように、その規模は前例のない大胆なもので、それ以前の“2倍”のペースで市場から国債などを買い上げるというものでした。当時の市場はこのQQEの規模に驚き、円安・株高が急激に進行しました。長らく下落が続いていた物価は、1.円安による輸入物価上昇、2.国内景気回復による需給ギャップ縮小(供給能力過剰の状態が解消)、という2つの物価上昇要因がタイミングよく重なったことで1%超まで上昇率を高めました。 しかし、14年秋頃になると日銀は新たな困難に直面します。原油安です。原油価格は、この頃から下げ足を強めました。日銀からすると、ようやく持続的な物価上昇の道筋が見えてきたにもかかわらず、原油安によって輸入物価が下落して、国内物価に波及するというのは都合の悪い話です。そこで日銀は14年10月31日にQQEをさらに強化することを決定しました。非資源国の日本にとって、原油価格下落はそれなりにメリットがあるので、日銀は何も策を講じないと市場参加者は予想していましたが、黒田日銀は以下のような声明文を公表し、何としても物価を引き上げる意思を示しました。 「原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、『量的・質的金融緩和』を拡大することが適当と判断した」