新型ホンダ サルーンが、日本の高級車を変える!? ランボルギーニ カウンタックよりも魅力的かもしれない1台に迫る
ホンダが発表した新しいBEV(バッテリー式電気自動車)の0シリーズ。日本に上陸した2モデルのうち、まずは「サルーン」を大谷達也が解説する。 【写真を見る】新型ホンダ サルーンの内外装(19枚)斬新な室内がスゴい!!!
ホンダの原点に立ち返る
2024年1月、アメリカ・ラスベガスで開催されたCES(かつてのコンシューマー・エレクトリック・ショー)で新しいBEVの0シリーズを発表したホンダは、そこで展示したコンセプトカーのサルーンと「スペース・ハブ」を日本に持ち帰り、3月5日から10日までホンダ・ウエルカムプラザ青山で一般に公開することになった。 2台のうち、まず目をひくのはサルーンのほうだろう。 まるでマルチェロ・ガンディーニが描いたランボルギーニ「カウンタック」のようなフォルムを持つこのモデル、デザインを担当した清水陽祐はそのコンセプトについて「ホンダの原点に立ち返り、シンプルな造形のなかに操る楽しさや躍動感を表現しようとした」と、語った。 「BEV市場で、ホンダは最後発ですから」と、控えめに語る清水は、だからこそ広く注目を集めるデザインであることが重要であると考え、「ラブ・アンド・ヘイト(好き嫌いがはっきりと分かれること)があるのは承知のうえ」で、このデザインを採用。それも、小手先の技で新規性を表現するのではなく、大胆なフォルムでその存在感を打ち出そうとしたと述べた。 いっぽう、ボディ断面は下にいくに従って幅が狭まる異例の形状を採用。こうすることで、全幅をいたずらに広げることなく、前後左右のフェンダーが力強く張り出しているように見える効果を生み出したという。 しかも、この断面形状は、中間付近から上の幅が相対的に広くなっているため、乗員の目線でいうと広々とした雰囲気を味わえることも特徴のひとつ。ウェッジシェイプの、いかにも室内空間が狭そうなフォルムながら、ホンダが掲げるMM思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)を実践している点もホンダらしいといえる。
2026年が楽しみだ
いっぽう、操る楽しさについては、ホンダBEV商品企画部の中野弘二部長に話を聞いた。 「これはZEROシリーズに限らずホンダのBEV全般にいえることですが、モーターやバッテリーをいかに低く、そしてクルマの中央近くに寄せることで、きわめて低重心、低慣性という特性を備えた、エンジン車以上に素性のいいプラットフォームができあがりました」 これはレーシングカーなどとおなじ考え方で、基本的な運動性能を高めるうえで極めて高い効果を生み出す手法である。 「そのうえで、6軸センサーを含む新しいセンシング技術を採り入れるとともに、バイ・ワイヤ技術も採用し、ステアリング、ブレーキ、サスペンションなどを広く組み合わせることで、ホンモノの意のままハンドリングを実現しています」 6軸センサーとは、クルマの姿勢変化を前後、上下、左右の3軸にくわえ、ヨー、ピッチ、ロールという回転方向の動きも検知するセンサーのことで、これを用いると4輪の接地状態が個別に検出できるとされる。 ここで得た情報をもとに、操舵、ブレーキング、駆動力を統合的に制御することで、ドライバーが狙ったとおりの走りを実現するというのが、コンセプトになっているようだ。 なお、バイ・ワイヤ技術とは、従来であればメカニカルなリンケージでつながっていたものを、一旦電気信号に置き換えてから電気的に駆動するシステム。たとえばステアリング系だと、ステアリングと前輪がメカニカルにつながっていないため、ドライバーによるステアリングの操作量は「ドライバーがどっちに進みたいか?」の、意思を検出する情報として活用。この情報をもとにして、ドライバーの意思どおりのコーナリングをするにはどのくらい前輪を操舵すればいいか……を、コンピューターが算出。結果に基づいて電気モーターなどにより前輪を性格に操舵する技術のことを、一般的にバイ・ワイヤ・技術と呼ぶ。 同様のことはブレーキについても可能だが、駆動力に関していえば、前後車軸間もしくは4輪の駆動力を個別に設定することで、ハンドリングの制御や姿勢の安定化などを実現できる。しかも、モーターであればエンジン以上に素早く、精度の高い出力制御が可能なほか、エンジンでは不可能な“逆回転の力を発生”させることも可能なので、これもホンダらしい“走る楽しさ”を実現するうえで大きく役立つことだろう。 今回の取材会では、まだまだ“奥歯にモノが挟まった”言い方が少なくなかったが、おそらく、2026年と目される発売までにはさまざまな新技術が開発され、製品に投入されることだろう。そのときを、楽しみに待つことにしたい。
文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)