無料漫画アプリの台頭 ── それを支える重要な2つの要素とは?
無料漫画アプリに共通する2つの要素
これら無料漫画アプリのサービスに共通する重要な要素が「無料」と「新人育成」である。出版社にとって虎の子のコンテンツである漫画を無料で公開するのは相当のチャレンジだっただろう。 しかし、そういったリスクを冒す一方でそれなりのメリットもある。中には全部無料という作品もあるが、大半の無料漫画アプリは取り扱っている大半の作品、とくに雑誌連載中の既刊作品などは1巻目、1話目、もしくはハイライト的に1話だけなど、一部を無料にするにとどめている。その無料の部分で読者を惹きつけ、電子版や紙版の漫画を買ってもらうという算段だ。 漫画のような巻数ものには有効な手法で、実際にAmazonがkindleの本を売る際に非常に多く用いられており、『進撃の巨人』の大躍進の一助となった戦術でもある。今では『楽天kobo』、『honto』、『BookLive!』など電子書籍を販売する事業者も同様のシステムを取り入れている。 この手法によって電子コミックの売上は大幅に増加し、2014年はコンテンツ数の増加も加味して、「電子コミックだけで1000億円近く(13年は731億円)売上げたのでは」とみる関係者もいるほどだ。
『ReLIFE』、『とんかつDJアゲ太郎』など無料アプリ出身の漫画家が活躍
そして、もう一つの要素が漫画家の「新人育成」という側面だ。 従来の紙の雑誌はページ数なども限られており、有望な新人でも作品が陽の目を見るまでには相当高いハードルを越えなければいけなかったが、そういった雑誌に比べると無料漫画アプリはかなり門戸が開放されている印象だ。 その結果、今では『ReLIFE』(夜宵草)や『とんかつDJアゲ太郎』(イーピャオ/小山ゆうじろう)など、無料漫画アプリ出身の漫画家の手掛けた作品が紙の単行本として発行されてヒットを飾るという現象も起きており、とくに『ReLIFE』は40万部を突破するほどの人気を集めている。 各社とも、こういった新人育成には力を入れているが、中でも突出しているのが『comico』で、『ReLIFE』に続いて1月23日には『保留荘の奴ら』、『ナルどマ』が単行本化され、2月14日には『咲くは江戸にもその素質』『ネト充のススメ』もKADOKAWAから単行本化される予定だ。