ビジネスに目もくれずプレーだけを追い求めたトム・ワトソン。“ゴルフ一筋”の純粋な志が垣間見える2つのエピソード【“新帝王”の60歳を振り返る #2】
「ワトソンと仕事しても商売にならないよ(笑)」
ワトソンがいかにピュアにゴルフだけを見つめているかとエピソードをもうひとつ。 ビジネスに興味が薄いということを物語るのに、ゴルフ場設計の数が少ないということがあるだろう。その数少ないひとつが米国モントレー半島にあるスパニッシュベイ。 これもスタンフォード大の先輩、時のUSGA(米国ゴルフ協会)会長でもあったサンディ・ティータムの依頼だから引き受けたという。米国ゴルフ界の大物ティータムとは完璧主義的気質が合って、ワトソンは可愛がられた。 設計といっても実際の土木工事などは、有名設計家ロバート・T・ジョーンズJr.に依頼した。この土地は環境規制が厳しく、例えば盛土してマウンドをつくるとき、そこの土を削ってはならず他の土地から持ってこなければならない。 しかし、ワトソンはそんな経費、時間のかさみなど一切斟酌なく、自分が描いた設計どうりのことを要求した。 「注文が厳しすぎる。ビジネスにならないよ」とジョーンズは苦笑したというのだ。 妥協を許さない、完璧を貫こうというワトソンの姿が彷彿とするではないか。 ゴルフダイジェスト特別編集委員/古川正則
みんゴル取材班