上野水香、ベジャール作品『ルナ』への挑戦も 休館を控えた神奈川県民ホールでバレエ・ガラ『Jewels from MIZUKA 2025』開催
県内の劇場と連携しながら舞台芸術を継承
その後の質疑応答では、黒岩知事に劇場の休館について質問が寄せられた。上野にある東京文化会館も、大規模改修のため2026年5月から2028年度中まで休館することが発表され、首都圏でオペラやバレエを上演できる劇場が不足することが問題視されている。 「県民ホールは皆さまに愛していただきましたが、50年が経って老朽化し、大規模修繕の繰り返しで、まさに限界がきています。来年3月で幕を閉じることにしましたが、その後については横浜市の都市再開発とあわせながら決めていきたい。大規模な劇場がなくなることは非常に重大な問題。舞台芸術をどのように継承していくか、裏方で支える方たちの技術をどう継承していくかという問題もある。神奈川県には鎌倉芸術館や横須賀芸術劇場もありますから、うまく連携しながら、技術の継承、場の提供の継承をしていきたい。また昨日、リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の工事現場内で〈さがみはらリニアフェスタ〉というイベントを開催しました。地下30メートルの広大なスペースを、エンターテインメントの拠点にしようという構想です。普通の劇場ではありませんが、そういったものもいろんな形で活用しながら、しっかりと継承していきたい」(黒岩県知事) 県民ホールの休館については、上野も「本当に寂しい」と嘆く。「夢の詰まった舞台をくれたのがこの神奈川県民ホール。〈Jewels from MIZUKA〉は感謝の気持ちをもって、より思いを込めた舞台にしたい」と語った。 思い入れの深い舞台での新たな挑戦に、ファンの期待は高まる。幼い頃から憧れていたギエムが踊った『ルナ』では、きっと新たな表情で観客を魅了するはず。 「ベジャール作品にはそれぞれにいろんな味わいがありますが、中でも『ルナ』には強くポエジーを感じます。この会場での最後の舞台、エモーショナルな、寂しいとか悲しいという気持ちをこめやすい作品だと思います。ジルさんが持ってきてくださったのは初演ダンサーが踊られている映像で、ギエムさんとは振りが違い驚きましたが、とても音楽的。バッハの音楽に寄り添った振付です。私もこの作品を踊ることで音楽になれたら。長いソロですので大変ではありますが、一つひとつのパにいろんな思いをこめられたら、と思っています」(上野) 取材・文:加藤智子 <公演情報> 「Jewels from MIZUKA 2025 ジュエルズ・フロム・ミズカ 2025」 プロデュース・出演:上野水香(東京バレエ団ゲスト・プリンシパル) 出演:中村祥子 吉岡美佳 厚地康雄 秋元康臣 ブラウリオ・アルバレス 柄本弾、沖香菜子、宮川新大、池本祥真 ほか、東京バレエ団より出演 2025年3月8日(土)15:00開演 会場:神奈川・神奈川県民ホール 大ホール <「ありがとう神奈川県民ホール」概要> (1) Jewels from MIZUKA 2025 ジュエルズ・フロム・ミズカ 2025 神奈川県出身、「かながわ観光親善大使」の上野水香をプロデューサーに迎えた国内外の第一線で活躍するダンサーによるバレエ・ガラ公演 (2) 神奈川県吹奏楽フェスティバル 長年吹奏楽コンクール等の会場として親しまれてきた神奈川県民ホールで行われる休館前最後の吹奏楽イベントとして、県内各地から様々な年代の方が参加する吹奏楽フェスティバルを実施 (3) 共生共創フェスティバル 「年齢や障がいなどにかかわらず、すべての人が舞台芸術に参加し楽しめる」をコンセプトに「横須賀シニア劇団」や「チャレンジ・オブ・ザ・シルバー(シニアダンス)」の公演、多文化の魅力を発信する展示・ワークショップ等、共生共創事業の企画に関連したプログラムを実施 (4)「とびだせ!マグカル開放区 in 県民ホール」 音楽やダンス、大道芸などのパフォーマンスを自由に発表できる場である「とびだせ!マグカル開放区」を大ホールで実施 (5) フィナーレコンサート「ありがとう神奈川県民ホール」 神奈川フィルハーモニー管弦楽団と混声合唱による演奏会等により、グランドフィナーレを盛り上げる (6) オープンデー 小ホールでのパイプオルガン体験やホワイエ等で過去の公演ポスター展示等を実施