『虎に翼』で描かれた多種多様な“カップルの形” 寅子と航一の恋模様の行方は?
寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)の関係にみる“戦後の恋愛の形”
『虎に翼』で描かれる恋愛は、個人の意思ではなく、社会への見られ方を前提にしたものが多かった。しかし、戦後の恋愛は大きく形を変えていく。それが寅子と航一の関係だ。寅子の恋愛模様が大きく動き出したのが第18週。航一はなぜ杉田(高橋克実)を抱きしめて謝っていたのか、その真意が明らかとなった。 戦時中、総力戦研究所という機関にいた航一は日米戦争を想定した総力戦の机上演習を行い、日本の敗北を確信するも、上層部は耳を貸さずに敗戦。その責任を感じ、後悔の念に苛まれていた。「あなたが抱えているものは、私たち誰しもに何かしらの責任があることだから。だから、バカの一つ覚えですけど、寄り添って一緒にもがきたい。少しでも楽になるなら」と優しく背中をさすり続ける寅子の存在が、航一にとっても救いとなっていた。 しかし、寅子にとってまだまだ優三の存在は大きい。第94話では優三の手紙が読み上げられ、そこにはこう書いてあった。 「その人を前にして、胸が高鳴って仕方ないのなら、その人が好きなら、今書いたことも、僕も、すべて忘れてその人の元に飛んでいってほしい」 優三は自分が死んだ後の寅子の将来を心配し手紙をしたためていた。胸の高鳴りを信じて、意のままに行動する。それは寅子がこれまで経験してきた恋愛とは異なるものだ。恋愛に無頓着な寅子がどこまで航一の思いに気づいているのかはわからないが、寅子にはいつまでも幸せでいてほしい。それが航一といることであるならば、優三も天国で優しく見守ってくれるはずだ。
川崎龍也