松本人志「訴訟取り下げ」への批判が“気持ち悪い”…「たかが週刊誌」に踊らされる人が知らない「性加害報道の実態」
● 松本人志「訴訟取り下げ」で 新たな火種勃発! 松本人志さんが叩かれている。 週刊文春を相手に「徹底抗戦」を表明して、訴訟に集中するということで芸能活動も休止していたにもかかわらず、その裁判がいよいよ始まるというタイミングで訴えを取り下げて「謝罪」をしたことが、「負けを認めたようなもの」「これで芸能界復帰などあり得ない」などと批判を浴びているのだ。 松本人志さんと吉本興業の初動は“最悪”、でも「文春砲=正義」の風潮に違和感のワケ それだけではない。性加害や性犯罪撲滅を願う人々が、この取り下げという対応に怒りを爆発させており、その中には、松本さんへの憎悪が強すぎて、SNSで「真偽不明の告発」に踏み切った方までいるのだ。 11月12日、元アイドルグループ「アイドリング!!!」の元リーダーである遠藤舞さんはXで「私の直の友人が松本氏らからホテルで性加害を受けています」と爆弾発言をした。 投稿によれば、この告発は今年1月からやんわりと言い続けていたが、今回の訴訟取り下げで松本さんの性加害が「揉み消されそうになっている」と感じたそうで、いてもたってもいられなくなったそうだ。 翌13日、SNSユーザーらとのやりとりで、この友人とは現在疎遠になってしまったと明かしたことで批判され、「私も現在真偽不明の所を断定する形で発言してしまった点は軽率でした。申し訳ございません」と謝罪しているが、裏を返せばそのような軽率な投稿をしてしまうほど、松本さんへの憎悪が強かったということである。 「当たり前だろ!せっかく文春砲が卑劣な犯罪を明らかにしてくれたのに、こんな形でウヤムヤにされることなど許されるか、本人が罪を自白して償うまで徹底的に叩くべきだ!」 そんな怒りの声があちこちから聞こえてきそうだが正直、かつて週刊誌や月刊誌の編集部に身を置いて、性加害報道に携わっていた人間からすると、このムードはかなり恐ろしい。
● 「文春砲」に踊らされる人が 見逃している「最重要論点」 本連載でも繰り返し述べているが、週刊文春の取材は確かにすごいのだけれど、犯罪捜査をする専門機関ではない。「たかが週刊誌」なので、間違えることもあれば、裏付けの取れていない話を報じてしまうこともあれば、「売れる」ために意図的に読者の溜飲を下げる方向へ論調を曲げることもある。 例えば、自民党の松下新平参院議員が、ある女性と男女関係にあると報じた文春記事で名誉を傷つけられたとして争っている名誉毀損裁判では、一審で裁判所はこんな判断をした。 「情報提供に安易に依拠して男女関係があると決めつけ、客観的な裏付けを欠いたまま記事を掲載した」(朝日新聞デジタル 9月6日) こういう話は例を挙げればキリがない。そんな週刊誌が報じた「疑惑」だけで、1人の人間を犯罪者と決めつけて、ネットやSNSで公然と罵り、仕事を奪えと叫び、さらなる「正義の裁き」を求めるこのムードは、背筋に冷たいものが走るし、もっと言うと気持ち悪い。 松本さんへの「正当な裁き」を望む善良な人たちの多くが、被害者の証言は100%の信頼で支持しているのに、「強制性の有無を直接に示す物的証拠はない」という事実は無視している。 「性加害を受けたと被害を訴えている人を応援・支援しよう」という正義の心を持っている人たちなのだから常識的に考えれば、社会の不条理・不平等は許せないはずだ。ならば、「物的証拠がない」という事実も同じように重視して、「確かに被害を訴えている人はいるが、その被害を裏付ける証拠もないので断定はできない」という慎重な態度になるはずだ。しかし、善良の人の多くはそうはなっておらず、松本さんを棍棒で袋叩きにしそうなほど攻撃的だ。 実際、「#松本人志をテレビに出すな」というハッシュタグが約半日で10万件を超えて投稿され、トレンド入りしたそうだ。 「公序良俗に反する者を裁くには証拠などなくてもタレコミだけで十分」というスキームが許されるなら、「被害」さえつくれば誰でも葬り去れる「魔女狩り」が横行してしまう。