星街すいせい「ビビデバ」の快挙や『狼と香辛料』ホロのデビューなど 新展開や記録達成続くバーチャル業界
■盛り上がるエイプリルフール その裏で新展開や記録達成も 今年の4月1日も、エイプリルフール企画が各所であふれた。VTuber業界も例外ではなく、ちょっとした小ネタから、ガッツリと配信企画やコンテンツ提供までやってのけるところまで、様々だった。観測範囲で特に話題が殺到したのは、ホロライブ・兎田ぺこらの“母親”が配信を実施したことだろうか。 【動画】『狼と香辛料』のメインヒロイン・賢狼ホロがYouTuberデビューを果たす 一方で、実際に新展開を見せたところももちろんある。特に華々しい事例として、ぽんぽこ&ピーナッツくんのコンビが、「ahamo」のオンラインアンバサダーに就任した件が挙げられる。ことし1月にはPR案件として動画投稿をしていたが、今回は単発企画ではなく、4月~7月にかけての起用だ。公開されたWebCM動画では、TVタレントのように出演する二人の姿が拝め、BGMにはピーナッツくん書き下ろしの新曲が採用されるなど、相当に気合の入ったタイアップだ。 新たな100万人登録突破の報告も、4月3日に2件届いている。にじさんじ・剣持刀也とホロライブ・姫森ルーナが、それぞれYouTubeのチャンネル登録者100万人を突破した。剣持刀也はにじさんじの2期生にして、現在もその媚びないスタイルが根強い人気を誇るタレントであり、にじさんじでは3人目となる男性タレントの金盾達成者だ。姫森ルーナはホロライブの4期生であり、彼女の達成によって4期生のメンバー全員が100万人登録者を突破したことになる。どちらも“二大巨頭”の強さを象徴するイベントだ。 前回の連載で紹介した星街すいせいの新曲「ビビデバ」は、4月7日にYouTubeのミュージックビデオが1000万再生を記録した。到達までの日数は約15日で、これまで最速だったしぐれうい「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」の17日という記録を塗り替えた。楽曲はもちろん、映像作品としての秀逸さ、ショート動画にも映えるキャッチーなダンスが功を奏したと思われる。VTuberの音楽シーンも、1000万という大台が当たり前のように飛び交うフェーズなのだろう。 シーンの外側でも、“VTuberらしい様式”も浸透が進む動きが見られた。4月1日に新TVアニメシリーズがスタートした『狼と香辛料』は、今なお人気のある同作のメインヒロイン・賢狼ホロを、あたかもYouTuberのように配信させる動画企画をスタートした。3Dモデルではなく、2Dを動かすLive2D的な手法が採用されており、名前をもじって「“ホロ”ライブ」などと呼ぶ人も見られた。4月3日に第1回が公開され、次回更新は4月10日を予定しており、一週間単位で更新されるコンテンツと思われる。TVアニメもこうした展開を行う段階なのだと思わされる事例だ。 東京書籍も同様の事例に取り組んでいる。英語の教科書に登場するキャラクターのエレン・ベーカーをVTuber的な3DCGで動かすプロモーション動画を公開。「キャラクターが動く映像」というコンテンツのフォーマットとして、VTuber的な動画がスタンダードな手法として採用される段階に入っているのかもしれない。 ■Reality Labs10周年 比較的おだやかだったXR業界の動向 XR業界に目を向けてみると、Meta社のXR研究・開発部門「Reality Labs」は、4月3日で創設10周年を迎えた。公式ブログでは、彼らがこれまでたどってきた歩みが紹介されている。『Oculus Rift』から始まり、『Oculus Quest』が発売され、ARグラスやAI研究も進めてきたその足跡は一読に値する。彼らがなにをしてきたのかを紹介する端的な資料にもなっているので、VRやXRの歩みを解説する上で役に立つかもしれない。 VTuber業界とは対照的に、XR方面の動きはおだやかなように見えた。国内のめぼしい動きとしては、配信者グループ「すとぷり」を運営するSTPRが、サニーサイドアップグループのブランドテック事業を担う事業会社・サニーサイドエックスとの業務提携を発表したことだろうか。STPRは直近になってGugenkaの株式取得を行い、XR・メタバース領域への動きを見せていただけに、納得感のある発表だ。本年の同社の動向には一層の注視が必要だろう。 また、サービス開始10周年を迎えたオリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI byGMOペパボ」は、スキルシェア市場への参入とバーチャルファッション領域の強化を発表した。特に後者については、画像1枚でアバター向けの3Dアイテムを作成する「3Dグッズ作成機能」の提供を告知し、すでに進んでいるバーチャルファッションブランドの誘致と合わせて、本腰を入れていく姿勢がうかがえる。バーチャルファッション領域は各所で注力の動きが見えるが、今年は参入プレイヤーの増加も加速するだろうか。
浅田カズラ