松本まりかさん(40)女優として芽が出なかった18年間「ただ、演じることは一生続けると思っていた」|STORY
希望もなかったけど、女優を“諦める”という選択肢もなかった
30代半ばを迎えた女優がそこから注目されるなんて、そんな希望は持っていませんでした。でもなぜか、「女優をやめよう」と思ったことは一度もなかったんです。現実味のない話ですけど、“演じる”ということだけは一生ものだと思っていて。求められるかどうかは別として、演じる以外の選択肢が私の中には無かった。女優を志した15歳の頃から、ずっとやり続けるんだろうなという根拠のない確信だけはありました。 だけど実力も足りず、人間的にも未熟。現実と自分が望む姿との間には明らかにギャップがあったんです。ただこの仕事は、周りに認められない限り演じる機会すら与えられないので、とにかく自分を磨こうと必死でした。そんな中で気づいたのは、演技の小手先のテクニックよりも、まずは人間力を高めることの大切さ。どんな演技をするのかという選択肢は無限にあって、それが役者に委ねられているからこそ、人間力が何よりも大事。結局は人を演じるので、人間を理解できなければ役を演じ切ることは難しいし、人の心を動かすこともできないのではとずっと感じていました。そこに向き合い、模索し続けていたような気がします。
小劇場でたまたま見つけてもらったことが、今に繋がるきっかけに
女優を10年ほど続けた時に、誰も知らない世界で自立して頑張ってみようとイギリスに1年間留学しました。その後帰国して出会ったのが小劇場の世界。「城山羊の会」という演劇ユニットの舞台が衝撃的に面白くて、オーディションを受けました。小劇場で活動を続けていた33歳の頃、「このままではさすがにダメだな」と絶望した瞬間があったんです。それまでバイトもせずに役者一本でやってきたけれど、稼げてはいなかったので、今後どうやって生きていこう…と。その時に、「いよいよ諦めて他の仕事をするのか?それともしがみつくのか?」という二択を自分に問いかけて、出した答えは「しがみつこう」でした。この仕事で生きていくんだ、と腹をくくった瞬間でした。 ちょうどその時期に小劇場の舞台で演じていたのが、“不倫をして豹変する狂気の女”の役。その舞台に若い女性プロデューサーの方がいらっしゃっていて、世の中に知られるきっかけとなった『ホリデイラブ』へのドラマ出演が決まりました。本当にスモールステップで綱渡りのようにやってきたところを、たまたま見つけてくださったことが出演に繋がったんです。だから今もこうして、お芝居を続けていられるんだと思います。 ■松本まりかさんprofile 1984年生まれ。2000年NHKドラマ「六番目の小夜子」でデビュー。2018年のドラマ「ホリデイラブ」でブレイクし、大きな注目を集める。以降多くの舞台やドラマに出演し、2023年4月には「ミス・ターゲット」でゴールデン・プライム帯連続ドラマ初主演を果たす。現在出演中のテレビ東京系ドラマ「夫の家庭を壊すまで」、2024年5月より公開の映画「湖の女たち」でも主演を務めた。 ブラウス¥42,900 スカート¥53,900/ハルミ ショールーム(リブ ノブヒコ) ピアス¥99,000/ウノアエレ ジャパン(ウノアエレ) その他 スタイリスト私物 撮影/古水良(cheek one) ヘア・メーク/佐々木七海(cheek one) スタイリスト/後藤仁子 取材・文/渡部夕子