ベテラン松田次生が迎える新たな挑戦。GT500昇格の名取鉄平とヨコハマタイヤの進化に貢献できるか? 近藤監督「ニスモのノウハウをフィードバックしてもらえれば」
1月18日に行なわれた日産のモータースポーツ参戦体制発表では、2014年から10年間NISMOのエースカーである23号車をロニー・クインタレッリと共にドライブして来た松田次生が、KONDO RACINGに移籍することが明らかになった。そして1月23~27日に行われたセパンのウィンターテストでは、ヨコハマタイヤを履く24号車Zを精力的にドライブする44歳の松田の姿があった。パートナーは昨年KONDO RACINGでGT300クラスにGT-Rで参戦し、今季ステップアップを果たした23歳の名取鉄平だ。 【写真】2024年型のGT500マシンが登場! スーパーGTセパンテスト:フォトギャラリー 松田は2000年にTEAM TAKE ONEからマクラーレンF1 GTRでGT500クラスにデビュー。翌年から5年間NAKAJIMA RACINGでホンダNSXを駆り2001年もてぎで初優勝を遂げた。2006年からはNISMOに移籍し、昨年までGT最多勝となる通算24勝を挙げ、2014年と15年に連覇を遂げている。さらにGT500ではブリヂストン、ダンロップ、ミシュラン、そして今季はヨコハマと4メーカーのタイヤを経験する初のドライバーとなった。 松田を迎えることについて近藤真彦監督は「名取を(GT500に)上げるに当たって、GT500ドライバーに育ててもらうのが一番良いんじゃないかと思っていたところへ、NISMOから次生をという話をいただいてぜひお願いしたいと。彼はチャンピオンタイヤを知るドライバーなので、まだ課題の残るチームに、タイヤとNISMOのノウハウをフィードバックしてもらえればという気持ちです。テストでも序盤からいろんな注文が来ています。ヨコハマのスタッフと一緒に作業をし始めて間もないので、まだ遠慮はありますけどね。彼には(タイヤの)良いところではなくて悪いところをコメントしてくれるようリクエストしています」と松田の経験に期待を込めている。 チームは昨年、第3戦鈴鹿で予選トップタイムを記録しポールポジション獲得かに思われたが、燃料タンクの違反で取り消しに。しかし次の富士で改めてポールを獲得するなど、一発の速さは度々見せた。ただその一方で、結果には結びつかなかった。 KONDO RACINGは2016年に佐々木大樹と柳田真孝のコンビで、タイヤ無交換作戦などを駆使し年間2勝を挙げたが、その年の2勝目(秋の第3戦もてぎ)以来、7シーズン優勝から遠ざかっている。 「去年はポールを獲りましたし、表彰台を狙える位置を走っていて落としたレース(第2戦富士など)もありました。その反省を踏まえてチーム全体の底上げをしていかなきゃと思っているのですが、今年は予選のやり方が変わって他のチームより厳しくなるかもしれません。そこをどうやってしのいでいくのか、まだちょっと手探りですけどね」と近藤監督は語る。 「今年はタイトル争いに絡みたいけれど、そんな欲はかかずに、狙ったどこかで1勝しよう、という話をしたんです。これも大変な作業にはなると思うけど、逆算して勝ちにいこうって。やっぱり勝ちたいもの!」 一方、10年在籍したNISMOを離れチームを移籍した松田は、どのような心境なのだろうか? 「心機一転という感じですね。タイヤがヨコハマになるので、いろいろチャレンジしがいがあります」 「すぐ勝ったりチャンピオンを獲るとか、そう簡単にはいきません。去年のランキングは15チーム中最下位ですから、相当な挑戦になると思います。でもそこから下はないのだし、僕もいい年齢だしいろんな経験で得たものをチームにフィードバックして底上げできるようにしたいです。僕に託された仕事はそういったところだと思います。これまで3メーカーのタイヤを経験してすべてのタイヤで表彰台は獲得しているので、まずはこのチームとヨコハマタイヤで4メーカー目の表彰台を狙いたいですね」 「楽じゃないけれど頑張ります」と最後に松田は笑って答えた。 コンビを組む名取に関してはどのような印象を持っているかと訊くと、「年齢も2回り近く違いますが、しっかりいい勉強をして速さもあるので心配はしていません。若い頃からカートレースの経験も豊富でしょうし、別にレースに関しては教えなくても全然問題ないと思います。GT300でも速かったですし」と言う。 近藤監督も「名取はもう一撃の速さは持っているので、これからはエースの強さを身につけてもらいたいですよね。GT300とは違って今度は抜いていく立場になるので、(課題は)その駆け引きや強さかな? 速さには何も心配していないし、次生を脅かすぐらいのものは十分持っています。セパンテストでも初めて走って、2日目の午前は名取がベストタイム出していますし」と不安要素は微塵もなさそうだ。 KONDO RACINGは新体制でスーパーGTシリーズの台風の目となれるのか? 新たなチームで松田の最多勝更新はなるのか? 今季はKONDO RACINGの巻き返しを楽しみに待ちたい。
皆越 和也
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