パトリック・トゥイプロトゥ、オールブラックス主将としての意識は?
趣味のゴルフでは、ボールを真っすぐ飛ばせないらしい。ただ、本職のラグビーでは真っすぐぶち当たる。力強く前に出る。 パトリック・トゥイプロトゥ。身長198センチ、体重120キロの31歳だ。オールブラックスことニュージーランド代表で手にしたキャップは、来日前までに46に及んだ。 「子どもの頃の夢は建築家でした。1年ほどそのたの学校へ通っていました。ただ、ラグビーのキャリアが大きくなったのでいまは夢のオールブラックスでプレーしています」 話をしたのは10月25日。日本代表とのテストマッチを翌日に控えていた。神奈川・日産スタジアムでのゲームへは、主将として挑む。 「これまでニュージーランド代表で色んなリーダーを見てきました。自分の中でのゲーム主将の役割は、周りの選手の力になること、互いにヘルプし合うこと、スムーズに試合を進めることです。明日もそれを心がけます」 ニュージーランドおいて、オールブラックスの主将は誉れ高い存在だ。しかし、「自分の人生は変わらないです。自分は自分です」。報道陣との会話での、立場によってどんな優遇措置が生まれるかの話題になってもこうだ。 「当然、レストランの列にはちゃんと並ばなければいけません」 午前中は滞在先で囲み取材に応じ、その足で都内の別なオフィスへ移動した。ニュージーランド航空のイベントに参加した。 オールブラックスになるのには何が必要か。イベントに参加した高校生に英語で聞かれた。「ニュージーランドへいらしてください」と笑い、こう続けた。 「自分のために自分が立てた目標を達成するために一生懸命頑張ることです。そして、その過程を楽しむことが大事です」 2021年度に日本のトヨタヴェルブリッツでプレー。この秋は久々の来日となった。ヴェルブリッツ時代のチームメイトのひとりにはチケットをくれないかと打診され、同部の主将で今回の日本代表にも入った姫野和樹とは「ソーシャルメディアを通じてハロー」とやりとりをしたという。 今回、向こう側のメンバーで予めその存在を知っていたのは「片手に入る程度です」だとしながら「ワーナー・ディアンズ、姫野和樹、ファカタヴァアマト、日本で対戦したことがあるファウルア・マキシ、彼のスーパーラグビー時代に戦ったマロ・ツイタマ、これからヴェルブリッツに入るニコラス・マクカラン、そして13番のディラン・ライリー…」。分析と準備は怠らなかった。 当日に示したのは、ジャパンにとってのタフな現実だった。 47キャップ目を掴んだ80分は、64-19で制した。自らも好ジャッカル、好突進で魅了し、こう締めた。 「最終的には自分たちの思うようなプレーができた。全体的に見たら、しっかりと勝利を見せられてよかった」 試合を進める際は、主将経験者のサム・ケインや司令塔のダミアン・マッケンジーといった他のリーダー格に助けられたとも続ける。 「チームには優れたリーダーがいて、彼らが決定をし、(次の動きについて)コールすることがある。プレーしながら改善していける。ゲーム主将としては幸運なことです」 ゲーム後の公式会見が終わる折、トゥイプロトゥを船頭役にしたスコット・ロバートソンヘッドコーチは「(滞在中の)おもてなしに感謝します」と言い残した。 (文:向 風見也)