「新聞販売店」倒産ラッシュが過去最多に 地域密着の強みから、新ビジネスに活路を見出せるか?
発行部数が減ればチラシ広告収入も減り、経営悪化の悪循環
J‐CASTニュースBiz編集部は、東京商工リサーチ情報部の調査担当者の話を聞いた。 ――新聞販売店が倒産ラッシュに追い込まれる理由は、何が一番大きいと思いますか。 調査担当者 配達員の人手不足とか、配達コストの上昇とか、いろいろな要因がありますが、何より発行部数の減少が大きいです。経営に直結する購読料収入の減少だけでなく、チラシなどの広告募集数も減少するし、広告料の単価の低下にも影響を及ぼし、経営悪化の最たる要因と考えます。 ――もう新聞メディアそのものが国民から受け入れられていないのでしょうか。 調査担当者 速報性や新聞紙の印刷、輸送、配達といったコスト面の負担を考えても、また読者人口の減少などさまざまな観点からも、紙媒体としての新聞の発行部数減少は避けられないと思います。 一方で、デジタル媒体では読者の増加を狙える可能性を残しているのではないでしょうか。 ――全国紙の地方からの撤退が相次いでいます。日本経済新聞が福岡県や山口県などで、また朝日新聞が北海道や東海3県などで夕刊を休止しました。そこに毎日新聞と産経新聞が富山県での配送そのものを休止するニュースが入ってきたわけですが、大手紙と地方紙の販売店の関係はどうなっているのでしょうか。 調査担当者 地方紙に押されて全国紙がシェアを伸ばせない地域では、販売店の倒産や廃業も追い打ちをかけて配送網の維持が困難となり、富山県における毎日新聞や産経新聞のように配送中止にまで追い込まれています。 一方、地方紙も部数減の打撃は受けていますから、「複合店」や「合売店」への転換が新聞販売店の生き残り策として選択されているようです。
牛乳配達、携帯電話代理店、買い物代行...さまざまな副業
――新聞販売店の倒産では、具体的にはどんなケースがあるのでしょうか。 調査担当者 埼玉県のA新聞販売店。負債総額約1億4000万円。読売新聞をはじめとする新聞販売店経営を主体に、近隣地区をエリアとして日刊新聞の販売、配達業務を行っていました。購読者数減少傾向が続くなかで、人件費などの経費負担も増し、業績が悪化。事業回復の見通しも立たず、資金繰りも限界に達して破産。 岩手県のB新聞販売店。負債総額約6000万円。岩手日報の販売店として30年以上事業を続けてきました。販売部数の落ち込みに加え、コロナ禍以降は折り込みチラシが大きく減少。業績回復の見通しが立たないまま破産に追い込まれました。 ――新聞販売店の生き残り戦略として、地域密着の強みを生かす動きを指摘しています。私が取っている新聞販売店でも、「おせち料理の注文受け付け」を始めたので驚いています。たとえば、どんな動きがあるのでしょうか。 調査担当者 各地で工夫と努力を続けている新聞販売店が多いです。牛乳配達販売、携帯電話や新電力の営業代理店、ミニコミ紙の発行、物販販売など多数の副業が見受けられます。 新聞配達以外の時間を使って他のモノをデリバリーする取り組みは珍しくなくなっています。たとえば、地元スーパーと連携して食料品や日用品を届ける買い物代行サービスを行うのも一例です。 地域に貢献するコミュニティーサービスとして、高齢者の見回りは代表的ケースです。新聞配達の際に、ひとり暮らしのお年寄りの体調を気遣ったり、郵便受けに溜まった新聞紙などで異変に気付いたり。独居老人が多い地方では特に効果的で、警備会社とタイアップする事例もあると聞きます。 「地域密着」の営業網を生かし、シニアをターゲットにした販売・サービスを手がける傾向が強いように思われます。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)