時間に追われる25歳舞台俳優は、ちょっと楽しみな逸材
菊田一夫演劇賞の授賞式に出席しました。大賞受賞のミュージカル「ラグタイム」に出演した石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい、演劇賞の柿澤勇人、宮澤エマ、三浦宏規、ウォーリー木下、特別賞の前田美波里が登壇しました。 授賞式は午前11時から始まったのですが、その2時間後の午後1時に開演する主演舞台「ナビレラ」が控えていたのが三浦でした、11時半に受賞のあいさつに立った三浦は「僕、午後1時から公演があるので、(授賞式後の)パーティーに出席できません。ごあいさつできない方がたくさんいらっしゃると思うので、この場をお借りして」と、時間に追われていることを明かして、会場の笑いを誘いました。その後、取材陣の写真撮影などもあって、三浦が会場を後にしたのは正午過ぎでした。 慌ただしいスケジュールですが、それだけ三浦が売れっ子であることを実証した形でした。受賞の対象となった作品も、「のだめカンタービレ」の千秋役、「赤と黒」のジュリアン・ソレル、「千と千尋の神隠し」のハク役と、多岐にわたります。8日に「ナビレラ」公演は終わりましたが、すぐにロンドンに向かい、11日からは「千と千尋の神隠し」ロンドン公演にハク役で出演予定です。 もともとは熊川哲也にあこがれて、クラシックバレエのホープでしたが、ケガのためバレエダンサーを断念。14歳で演劇に転身し、「刀剣乱舞」「テニスの王子様」などに出演していました、私が舞台で三浦を初めて見たのは2019年のミュージカル「レ・ミゼラブル」でした。当時20歳の三浦は歴代最年少のマリウス役で、初々しさの中に秘めた芯の強さが印象に残りました。23年には「キングダム」に信役で主演して、派手な立ち回りを披露。その高い身体能力に驚いたものです。「ナビレラ」はバレエダンサー役で、実際にバレエシーンもありました。これは三浦じゃないと成立しない作品だと思いました。 三浦は25歳の若さ。世界デビューとなるロンドン公演を経て、どんな成長ぶりを見せてくれるのか、ちょっと楽しみな逸材です。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)