米国経済は「疲れている」…?日本製鉄のUSスチール買収に「トランプ・バイデン双方」が反対するワケ
日本製鉄によるUSスチール買収が難航している。今回の買収に対してはトランプ前大統領に加えてバイデン大統領も反対を表明し、オールアメリカで阻止の動きになってしまった。一連の反対運動の背後には、米国社会の保守化(内向き化)という大きな流れがある。株主総会の決議はクリアしたので、今回の買収は何とか実現できるだろうが、米国市場にはいつでも簡単にアクセスできるという従来の常識はそろそろ捨てる必要がある。 【写真】NYタイムズ紙が「今年行くべき52ヶ所」で第3位に選んだ日本の都市
バイデン大統領も反対
日本製鉄は2023年12月、米国の伝統ある製鉄会社USスチールを買収すると発表した。米国において製鉄業は以前から斜陽産業とみなされており、買収はスムーズに進むかと思われたが、政治的な横やりが入ったことで状況が変わった。 大統領への返り咲きを目指すトランプ前大統領が突如、USスチールの買収反対を表明したことに加え、現職のバイデン大統領までもが反対の意思表示をするなど、米政界が総出で買収を阻止する形になってしまった。 トランプ氏は保守派を支持基盤としており、トランプ氏の支持者の多くが買収に反対であることは容易に想像できる。日本ではどういうわけか「保守」と呼ばれる人たちは「親米」で、外国が大好きだが、諸外国で保守といえば、基本的に排外主義、自国中心主義であり、そもそも外国とのやり取りを好まない。当然、トランプ氏を支持する保守層も外国企業による買収に否定的であり、大統領選挙が近いこともあってトランプ氏は政治的アピールを行ったものと考えられる。 選挙が近いという点ではバイデン氏も同じである。 民主党は労働組合を支持基盤のひとつとしており組合も今回の買収には反対を表明している。結局、トランプ氏にとってもバイデン氏にとっても、日本製鉄による買収は恰好の政治的ターゲットであり、選挙対策に使われたという面が大きい。買収の手続きについては、4月12日に開催された臨時株主総会で承認が得られたことで前進しており、規制当局の審査が順調に進めば秋にも買収が実現する見通しである。