巨額還元でも抜け出せない東洋証券の物言う株主対応、新中計の中身は「なりふり構わぬ収益改善策」
こうした施策によってROE8%を達成したとしても、いつまでも含み益や不動産の売却益に頼れるわけではない。小川社長は「(保有株の売却で)時間をいただいて、その間に安定収益を積み上げる」とし、いずれは本業の収益でROE8%を実現させる方針だ。だが、その利益水準まで預かり資産を積み上げるハードルは極めて高く、うまくいくかは不透明だ。 加えて、経営を安定させるためには株主提案をした物言う株主との関係改善、ひいてはこれら株主の「出口」も模索する必要がある。
東洋証券は2023年12月に、株主提案をしたUGSアセットマネジメントなど4社は「共同協調関係」にあると認定し、対立を深めている。4社の目的は不明だが、相応の資金を投入して東洋証券株を購入している以上、一定の利益が見込めなければ売却することは現実的でない。 ■強気配当で失われる自己株買い余力 そこで打った施策が、2027年3月期までの50円配だ。株主に利益をもたらし、物言う株主が退出できる環境を整える狙いが透ける。
ただ、この施策にも不安視する声がある。前出の証券会社幹部は「4社が保有する株式は大量なので、退出してもらうには自己株買いで対応する必要がある。せっかく保有株の売却で手元資金を得ても、配当で吐き出してしまうと自己株買いの余力がなくなるのではないか」と指摘する。 結局、問題を解決するには東洋証券自身が企業価値を高め、株価を上げていくしかない。東洋証券の株価は株主総会があった6月25日の終値392円から徐々に上がり、11月11日には566円に達した。PBR(株価純資産倍率)も1倍を超えている。
一方で、新中計発表翌日の10月31日には初値で631円の年初来高値をつけた直後に、100円以上も下落するなど荒い値動きも目立つ。株価を高値で維持させつつ、収益を高めることができるのか。東洋証券にとってギリギリの闘いが続く。
高橋 玲央 :東洋経済 記者