「死」を意識したときに考えた…「8歳の息子」に贈りたい「本」5選
スペインには大切な人に本を贈る「サンジョルディの日」という風習がある。 この「大切な人に本を贈る」というテーマで何か書いてくれないか――と依頼されてすぐ、ぶっ倒れてしまった。 【写真】<数学間違い探し>大学生でも間違える計算「40-16÷4÷2」の答えは? 8歳の息子からインフルエンザがうつったのである。40度近い高熱で身動きが取れなくなり、約1週間、ほぼ横になっていた。 このまま死ぬかもな、とまでは思わなかった。でももし自分が死んでしまうとしたら、その前に子どもに贈る本は何にするだろうか、と考えた。
1.辻村深月『かがみの孤城』
生きていればしんどいこともある。しんどいときの方が多いかもしれない。 そういうときに手に取るといいかもな、という本を贈りたい。 私の子どもは規律正しい行動や、集団に合わせることを求められると、うまくできなかったり、反発したりすることが多い。人間に対する好みも激しく、合わない人(とくに大人)には拒否感を示し、反抗的になる。学校には行ったり行かなかったりだが、今のところ悲壮感はない。 しかし10代になって思春期に突入したら、人間関係で思い悩むようになったり、いじめにあったりするかもしれない。 別に学校には行かなくてもいい。 ただ、そのとき自分の気持ちについて理解してくれる人、関心を示してくれる人がまわりにいないかもしれない。私や妻がいくら寄り添おうとしても、拒絶されたり、近すぎるがゆえに衝突してしまったりする可能性もある。 リアルな人間関係に居場所を見いだせなかったとしたら、フィクションに救いを求めるくらいしか現実的に選択肢がない。 そういうときに読んでもらいたい本として真っ先に思いつくのが『かがみの孤城』だ。 ただ主人公たちが不登校の集まりという設定が設定なので(あまりにもストレートすぎる)、押しつけがましくなく手に取ってもらうのが難しそうだが、なんとか工夫して、読んでもらいたいと思う。
2.永井豪『デビルマン』
人間関係の難しさに直面し、大人や社会に対して増悪や違和感を抱いたら、人間の醜さ、愚かさ、絶望をこれでもかと突きつけてくる『デビルマン』を読んでほしいと思う。 何かに怒ったり、失望したりするのは、期待の裏返しである。「こうであってほしい」という暗黙の前提を裏切られたとき、それより下回ったときに人は憤慨し、がっかりする。 しかし人類はそもそも期待するに値する存在なのだろうか。 身勝手で、集団になると行動がエスカレートして残虐なことにも躊躇しなくなることもある。そんなひどい存在だとわかってなお信じるという態度を取るのか、それとも……。『デビルマン』を通じてそんなことを考えてもらいたい。 「期待値を下げればイライラしない」ということにも気付いてほしいが、これは彼の性格的に、頭でわかったとしても実践するのは難しいかもしれない。