米駐日大使にグラス氏、トランプ氏の資金調達役担い「論功行賞」…対中強硬姿勢も重視か
【ウェストパームビーチ(米フロリダ州)=阿部真司】米国のトランプ次期大統領が、駐日大使に大口献金者で実業家のジョージ・グラス氏の起用を発表したのは、自身を支えた「論功行賞」の意味合いが強いとみられる。一方で、中国への対抗を念頭に、駐ポルトガル大使時代のグラス氏の対中強硬姿勢を評価した可能性もある。
グラス氏は、今年の大統領選でトランプ氏の資金調達役を担った。米メディアによると、9月にユタ州で開いた資金集めパーティーでは、短期間で約500万ドル(約7億7000万円)を集めたとされる。
近年の駐日大使人事では、オバマ政権のジョン・ルース氏や、第1次トランプ政権のウィリアム・ハガティ氏ら、選挙戦での資金集めなどの支援に報いるケースが少なくない。グラス氏もその一人とみられ、日本との直接的な関わりは明らかになっていない。日米関係を専門とする知日派の中では無名に近い存在だ。
ただ、2017~21年のポルトガル大使時代は中国への警戒感を隠さず、ポルトガル政府に圧力をかけたことでも知られる。そうした「実績」が、トランプ氏の目に留まったのではないかとの見方もある。
グラス氏はポルトガル大使在任中、地元メディアの取材に「ポルトガルは米国か中国かのどちらかを選択する必要がある」と述べた。中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を巡り、ポルトガル政府が同社と契約すれば、米国との機密情報のやり取りに支障が出ると警告したもので、ポルトガル国内では「内政干渉だ」との反発も招いた。
トランプ氏は起用発表に先立つ記者会見で、「尊敬できる人物だ。大使を務めた経験もある。素晴らしい仕事をした」と称賛した。
駐日大使は大統領と日本とのパイプ役が期待されるが、トランプ氏は外交・安全保障政策の中心メンバーを対中強硬派で固めており、グラス氏が経済分野などで日本側に注文を付けてくる可能性もある。
明海大の小谷哲男教授は、読売新聞の取材に「日中が経済的に接近しないよう、クギを刺す役割があるのではないか」と指摘した。