ボルティモアの橋の崩落が浮き彫りにする「米国のアキレス腱」、インフラ老朽化という難題
どうなる? 米国のインフラの未来
新技術の導入は遅々としているものの、米国が抱えるインフラ問題の一部を解決できるとムケルジー氏は楽観視している。ドローンを活用すれば、人が到達できない場所を細部まで見ることができ、人的ミスの可能性を減らすことができる。ミシシッピ川の橋で亀裂が発見される2年前、無関係のドローンが撮影した動画にこの亀裂が映っていた。 米メリーランド大学カレッジパーク校の社会環境工学教授ビラル・アイユーブ氏は北米の貨物鉄道会社と連携し、コンピューターモデリングで線路の脆弱(ぜいじゃく)性を探している。何千もの駅を詳細に調べ、「損傷が発生した場合、最も大きな影響が予想される地点を正確に特定」できるとアイユーブ氏は説明する。 専門家によれば、朗報が1つある。2021年、米連邦議会で超党派インフラ法が可決され、米国の社会を支えるシステムの不調に5年間で1兆2000億ドル(約180兆円)が投じられることになったのだ。これは米国史上最大の連邦政府の投資だ。 「過去8人の大統領は皆、インフラに1兆ドル単位の大金を投じるべきだと言いましたが、一度も実現しませんでした」とリーマン氏は話す。 しかし、定期的に資金を投入しなければ、出血を止めるくらいのことしかできないだろう。国民の生活の大部分を可能にしているシステムがまだ使えるうちに、政府が整備を始めるときが来たとリーマン氏は考えている。 「雨漏りがあれば、屋根に登って穴を見つけ、屋根板を交換し、タールを塗ります」とリーマン氏は話す。「何もせずに放置すれば、少しの修理では済みません。屋根を丸ごと取り換えることになるんです」
文=Allie Yang and Alissa Greenberg/訳=米井香織