「コミックマーケット」から女性作家が消えている?…ファンの声から見えてきた「同人誌即売会の闇」
コミックマーケット(以下コミケ)が2023年の12月30日、31日に行われ、来場者数は、2日間で27万人と、同年8月に行われたコミケに比べ、来場者は1万人増加した。 【写真】すごい…池袋のコスプレイベントを盛り上げた美女レイヤーたち コロナの影響で入場制限が行われていたが、前回に引き続き入場規制を大幅に緩和した。個人で雑誌(同人誌)を作って売るイベントである同人誌即売会としては最大の規模で、日本の年末の風物詩の一つだ。 そんな同人誌即売会であるコミケから、あるジャンルが少しずつ減っているという。そのジャンルは書き手が女性なことが多い男性同性愛を題材とした雑誌や小説を指すBLと、ニッチジャンルだ。 なぜBLやニッチジャンルは減ってしまうことになったのか。過去、実際にコミケに参加していたBLサークルの女性に話を聞いた。 「いろいろ理由はありますが、同人即売会が増えたことが一番大きな理由だと思います。HARU COMIC CITY(通称春コミ)、COMIC CITY SPARK(通称スパーク)、SUPER COMIC CITY(通称スパコミ)など、他にも入場者数が数万人単位になる大規模イベントが増えています。これらを運営している赤ブーブー通信社(以下、赤ブー)は参加するサークルを先着順で決めていて、コミケのように抽選に通るかどうかを気にしなくてすむので、スケジュールがしやすいんです」 実際に毎年赤ブーイベントで女性向け同人誌を発刊している30代の女性作家から話を聞くと、女性向けサークルを展開する作家がコミケから赤ブーに流れているのは概ね正しいとのことだ。しかしそれだけではない。 「赤ブーはコミケと比べるとジャンルへの気配りがぜんぜん違うんです。BLは他のジャンルと文化が違うんですが、コミケの運営はそこへの配慮を重視していない気がします」 コミケでは作品が同じであれば同じ島と呼ばれる場所に座席が決まるが、赤ブーでは作品内のキャラクターで位置が決まるため、参加者に優しいのだという。 コミケのような座席の決め方はBL作品では乱暴なようで、赤ブーの座席の決め方が丁寧なことも赤ブーに女性作家が流れた理由のひとつなのだとか。 BLが好きな人にとって、カップリングと呼ばれるキャラの組み合わせはいちばん重要な要素。自分の出店するスペースの近くに、これだけは受け入れられないというカップリングの本を売るサークルがあれば、嫌がらせをする人もいるのだという。 「BLのジャンルは他と比べて細分化が進みやすいんです。 赤ブー主催のイベントでは、『〇〇オンリー』『〇〇プチオンリー』のような、『作品やキャラクター、カップリング』のみのイベントも多く、参加しやすいです。苦手なカップリングを避けられるので。また、コミケとは違い参加表明から、実際に参加するまでの期間が短く、熱量を持ったまま参加できることが赤ブーの人気理由の一つです」(同上の30代同人作家女性) 特定の漫画やゲーム作品のみで展開されるのがオンリーイベント、さらにそこからキャラクターのみで展開されるのがプチイベントになる。ジャンルを細分化することによって、参加者がより参加しやすい環境が作られているため、BLを好む女性はそちらに流れてしまったようだ。 では、ニッチジャンルの方はどうなのだろうか。ニッチジャンルと言われている食べ歩き本、町中華紹介、宇宙物理学、ミリタリーなどのサークルに話を聞くと意外な答えがかえってきた。 「そういうふうに言われていることは知っていますが、そんなことはないと思いますよ。ニッチジャンルと言われているくらいですから、そもそもそんなにいっぱいいるわけじゃありませんし」 他のサークルも同じように、一般層にはウケないかもしれないが、本当に自分の作りたいものを参加者と共有するために、創作をしている。なかには、芸能人がこっそり使っている隠れ名店を紹介する本を作るために、週刊誌の記者と協力して本を作っている人もいるほどだ。 実際に行ってみた記者も、「こんな本まで!」とびっくりすることが多かった。興味が湧いた人は来年の年越しイベントとして、ぜひ来場を検討してみてはいかがだろうか。 取材・文・PHOTO:白紙 緑
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