すごい作品が目白押し! イリーナ・メジューエワが東京で弾く傑作揃いの「ショパン中期」
ロシアピアニズムの伝統を引き継ぐ女性ピアニスト、イリーナ・メジューエワが、ショパンの主要作品を創作時期ごとに紹介する全4回のリサイタル・シリーズ「ショパンの肖像」(全4回)。 【画像】イリーナ・メジューエワが東京で弾く「後期ショパン」幽玄の美 昨年夏の第1回と年末の第2回では、ショパン初期~中期の作品が演奏された。そして、来る6月に開催される第3回目では、中期~後期の作品が演奏される。 『ショパンの名曲 ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ2』(講談社現代新書)など、ショパンに関する著書もあるイリーナが、ショパンの中期、そして演奏会のプログラムに選んだ曲の聴きどころについて語ってくれた。【前編】 ---------- イリーナ・メジューエワ ピアノリサイタル「ショパンの肖像」(全4回) 第3回(中期~後期):2024年6月22日(土) 東京文化会館 小ホール 【プログラム】 ポロネーズ第6番 変イ長調Op.53「英雄」/ピアノソナタ第2番 変ロ短調Op.35「葬送」/バラード第3番 変イ短調Op.47/即興曲第3番 変ト長調Op.51/ポロネーズ第4番 ハ短調 Op.40-2/マズルカ(ハ長調Op.33-3,ホ短調Op.41-2,変イ長調Op.50-2,嬰ハ短調Op.50-3)/3つのワルツOp.34/ワルツ 変イ長調Op.42 2024年8月24日(土)宗次ホール(名古屋市) 【プログラム】 マズルカ 変イ長調 Op.50-2/嬰ハ短調 Op.50-3 即興曲 第3番 変ト長調 Op.51/2つのノクターン Op.55 スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54 ***** 3つのマズルカ Op.59/ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58 ----------
「マッチョ」なショパン?
ショパンにおける中期とは、彼が円熟に向かう時期です。そしてこの時期のショパンの音楽には英雄主義的な要素が強く出ていると思います。自分の限界を乗り越えたいというベートーヴェン的なヒロイズムと言ってもいいかもしれませんが、構えが大きく、重くて密度が濃い曲がほとんどで、軽い曲があまりない。 ピアニズムもヘビー。筋肉質といいますか男性的です。物理的にも、手がちょっと足らないみたいな感じ。あとちょっと、あと1センチぐらいほしい(笑)。 中期の代表作はやはり「ピアノ・ソナタ第2番」だと思いますが、この曲に関して、前よりも作曲家自身の苦しみ、悩み、と同時に計算といいますか、ショパンがちょっと遊んでいるところなども、少しだけ見えてきた気がします。 例えば数字で2、2、2。あるいは4、4、4。そういったものを組み合わせて、ポリリズムを作ってゆくんですね。前から知っていたことですが、以前はそこまで意識していなかったかもかもしれません。 演奏には出ないかもしれませんが、楽譜の読み方がより細かくなったと思います。ですから自分の中で面白さがすごく増えています。中期を代表する素晴らしい作品ですし大事なソナタですが、私の中ではちょっと違和感というか、もともと私はどっちが好きかというと第3番のほうだったのですが、今は第2番も好きになって、曲との距離がより近くなったように思います。は、「あっ、なるほど、こういうことがやりたかったんだ!」ということがちょっとだけですが、わかってきて面白いです。 有名なドラクロワのショパンの肖像画にいちばんイメージが合っているのがこのソナタの第3楽章「葬送」ではないでしょうか。非常に暗いパッションの世界ですが、この楽章からこのソナタのすべてが生まれたと言ってもいいと思います。第3楽章がやっぱり「肝」。ですからそれを聴かせたいですね。