常石造船、東ティモールに新工場。検討に本腰。海外拠点拡大へ
常石造船は、海外での新工場建設の具体的検討に入った模様だ。対象は東ティモール。同社はこれまで東南アジア地域での新たな建造拠点立ち上げを模索。今年に入り現地で調査などを実施しており、計画が具体化してきたとみられる。 東ティモールのシャナナ・グスマン首相、在東ティモールの日本大使館が11月下旬までに、常石造船首脳の東ティモール訪問、同国での工場建設に向けた調査実施などについてSNS(交流サイト)のフェイスブックを通じて公表した。常石造船はこの件について詳細を明らかにしていない。 常石造船は毎年4月に開催していた首脳の定例会見(現在は休止)で、2012年以降、東南アジアで工場建設を検討していることを紹介。建造対象について、東南アジア域内輸送向けRORO船などとしていた。中長期的に世界的な新造船需要拡大が見込まれる中で、東ティモールの新工場は、将来的に主力工場の一つとしていく可能性がある。 世界全体の建造能力は、リーマン・ショック前には年間約1億総トンあったものの、業界再編による建造拠点集約、一部企業での事業休止や、人材不足などもあり、今は同6000万総トン程度に落ち込んだ。年間建造量が1億総トンレベルだった時期に建造した船が、今後リプレース(代替建造)時期を迎える。これに加え、IMO(国際海事機関)のGHG(温室効果ガス)削減目標が「50年ごろまでのネット排出ゼロ」に引き上げられたこともあり、工期が延びる新・代替燃料船の需要も急増する。中長期的には新造船需要が堅調に推移するとの見方が強い。常石造船の動きはこの見通しが後押ししている面もありそうだ。 常石造船や神原汽船などで構成される常石グループでは、主要な商船建造拠点として、常石造船の常石工場(広島県福山市)のほか、1994年設立のフィリピン・セブ島のツネイシ・ヘビー・インダストリーズ〈セブ〉(THI)、07年に船体ブロック製造の子会社2社が統合して誕生した中国・浙江省の常石集団〈舟山〉造船(TZS)などを抱える。 THI、TZSでは当初、バルカーに特化し繰り返し造る方策を取り、10年超でそれぞれ年間20隻規模を建造できる体制を構築している。常石グループでは、新船型の第1船は従来、常石工場で手掛けてきたが、現在は一部の船種で新船型第1船の建造を海外工場が担うなど、効率運営に成功している。
日本海事新聞社