「軽トラ = 農業」というイメージを打破し、「一般車」として普及させるにはどうすればよいか?
ネックは「乗員人数」
まず1台めは、ホンダが東京オートサロン2017に出品した「エヌラボ T880」だ。「働く車はカッコいい」をコンセプトに、アクティトラックをベースにした軽トラコンセプトモデルだったが、残念ながら市販化はされなかった。その後に同社は、アクティの生産を2021年4月に終了し、軽トラ市場から撤退した。 2台めは、2023年に開催されたジャパンモビリティショー2023でダイハツが出品した、軽トラコンセプト「ユニフォームトラック」である。ミニマムなデザインで、軽トラの未来像を予感させるモデルだった。 最後に、スズキが販売中のスーパーキャリー・Xリミテッドを紹介する。ボディカラーにメタリックカラーを設定し、特別装備オプションもあり、街乗りにふさわしいグレードを提供している。 このような外観デザインの一新だけでなく、シート改良などインテリアデザインの改善に加え、 「快適装備(エアコン、カーナビなど)」 の充実も必要となるだろう。しかしながら、一番のネックとなるのは乗員人数である。現在はふたりまで乗車が可能だが、 「荷台を省スペース化」 するなどして、乗員人数を増やす工夫が求められる。このように既定概念を覆すデザインの軽トラを売り出し、多様化するライフスタイルに合わせたプロモーションを通じて、若年層や都市部住民へ訴求をしていけば、ヒットを生み出せるのではないか。さらに、 ・税制優遇や補助金の導入 ・都市部での駐車場優遇措置 などを整備し、インセンティブを与えることで、軽トラの普及はさらに進むものと思われる。
「カスタムカー」という手段
軽トラのプロモーション施策の成功事例として挙げられるのは、 「軽トラ市」 である。2005(平成17)年に岩手県雫石(しずくいし)町で発祥して全国に広がった地方創生や地域活性化のイベントだ。軽トラの荷台を店舗に見立てて、食料品、衣類、雑貨などの商品を販売する。 軽トラを販売する自動車業界も同市を全国に広めるための支援をしている。JAMAは、公式ウェブサイトで 「全国軽トラ市情報」 を掲載し、各地の開催予定を確認することができる。スズキは、軽トラを移動販売車に早変わりさせるテント一式「軽テン」を販売する。 軽トラ市が全国各地で開催されて地域活性化に貢献していることは喜ばしいが、販売される農産物から、 「軽トラ = 農業」 のイメージから脱却できない。そこから脱却するには、都市部でも、街乗り車のイメージが軽トラに定着しなければならない。その一端を担うのは、近年増加しつつある軽トラの 「カスタムカー」 である。トヨタ・ハイエースなど商用バンをカスタマイズして街乗りしているカスタムカーが増えているが、軽トラでも同様のムーブメントを期待したい。