重さ8キロの巨大ダイコンも!伝統作物、普及目指す 鹿児島で学校拠点に保存の取り組み、子どもたちも一緒に
生産者が減って流通に乗らず、消滅の危機にある伝統作物を、学校を拠点にして保存し、地域に「里帰り」させようという動きが鹿児島で活発化している。子どもたちが校庭で育てて給食で食べたり、特徴や歴史を調べたりするなど、貴重な教育資源にもなっている。「伝統作物は地域の文化。次世代につなげたい」。試行錯誤しながら継承に取り組む保存団体や学校の活動を追った。(共同通信=高槻義隆) ▽先祖が命をつないだ食材 伊敷長ナス、松原田ダイコン、佐仁ニンジン…。2019年に発足した「鹿児島伝統作物保存研究会」会長で、鹿児島大農学部教授の志水勝好さん(56)によると、「鹿児島は伝統作物の宝庫」。研究会がこれまでに集めた伝統作物は約130種に上る。離島が多く、交配種が伝わりにくかったことに加え、地域で行事食の食材として継承されていたことなどが理由とみられる。 研究会の事務局幹事で、鹿児島大の技術職員中野八伯さん(43)は、県内の小学校から短期大まで約10校を回り、栽培を指導している。「先祖が命をつないできた大事な食材。発信しないと消えてしまう」と危機感を抱く。
▽そぼろ煮にして「おいしい」を連発 鹿児島市伊敷地区で1960年ごろまで育てられていた強い甘みが特徴の「伊敷長ナス」。成長に時間がかかり、生産者が減っていたが、市立玉江小の5年生が2021年、校庭で育てる「里帰りプロジェクト」を始めた。中野さんの指導を受け、種まきから始めて100本余りを収穫し市場で販売した。有川武教頭は「子どもたちは達成感を得て自信を持つようになった」と話し、成長にもつながったと明かす。 全校児童生徒10人の鹿児島県瀬戸内町立篠川小中学校でも、中野さんの提案を受け町内の古志集落に伝わる「古志大根」を育てた。今年2月に約60キロを収穫して給食に使い「そぼろ煮」で食べた子どもたちは「おいしい」を連発したという。 指宿市立開聞小で子どもたちが昨年から育てているのは、開聞岳山麓の集落で栽培されてきた「松原田ダイコン」だ。長さが60センチ、重さが8キロにもなる。PTA会長の迫中誠一さんは「学校から発信し、生産者が町の特産として作れば、伝統野菜も残る」と話す。種子の採集までめどが立ち、今年はさらに本格的な栽培に取り組む予定だ。