大谷登板日の極寒試合中止は怪我させないための忖度だったと米報道
エンゼルスの大谷翔平(23)が先発予定だった15日(日本時間16日)の敵地でのロイヤルズ戦は天候不良で中止になった。 カンザスシティは強風で雪が舞う寒さだった。当初は、悪天候にもかかわらず試合の開始を試みたが、予定の30分ほど前に中止が発表された。 USA TODAY紙は、この中止を巡るメジャーリーグ機構とロイヤルズ球団の悩みについて触れている。 「メジャーリーグは彼らの気持ちを変えて、ゲームにおける最高のマーケティング商品を保護した」 大谷が、先発する試合なので、どうしても試合を行いたかったが、メジャーリーグにとっても大事な宝となっている大谷を守るために中止を決断したことをほのめかしている。 同紙は「一部の選手は、ジャッキー・ロビンソン・デーのテレビ中継で大谷が先発するので、自分たちは試合をしなければいけないのだろうと思っていた。けれどもショーはキャンセルされた。これも、大谷が投げるからかもしれない。もし、大谷が気温1度、体感温度マイナス8度の天候で、ピッチングをして怪我でもしたら、メジャーリーグ機構はどのように説明するのか、想像ができるだろうか」と述べている。 大谷を守るために“忖度中止”だったわけだ。 大谷は2日後の17日(日本時間18日)に本拠地で行われるレッドソックス戦にスライド登板する予定だ。 対戦相手のレッドソックスは、今オフ、大谷を獲得しようと動きながらも、獲得できなかった球団のひとつだ。ベーブ・ルースは、レッドソックス時代に投打ともに頭角をあらわし、二刀流として活躍していたチームでもあり、大谷とは遠からず因縁がある。 敵地アナハイムで大谷と対戦するレッドソックスの地元紙、ボストンヘラルド紙は、「エンゼルスが獲得した大谷は、レッドソックスが失ったものである。レッドソックスは二刀流のこの天才と契約したいと望んだ。強く望んだ」という記事を配信した。 同紙では具体的にレッドソックスが大谷獲得のために手を尽くした様子が述べられている。 「昨年の冬、大谷にチームを紹介するための25分の動画が作られ、日本語と英語でも楽しめるように仕上げた。レッドソックスに入団することがいかに歴史的であり、特別かを紹介した。ベーブ・ルースは100年前にレッドソックスのすばらしい二刀流選手だった。また、現在のレッドソックスのインフラは、大谷がベーブ・ルースを追いかけるのを喜んでサポートできる体制であることもアピールした」 レッドソックスのアラン・ベアードスカウトは2011年から少なくとも11回以上、来日し、大谷を調査し続けていた。同紙は、そのベアードスカウトの言葉を紹介している。 「高校のときから、この子は違うと思った。自分の体の感覚、運動能力が抜きんでていて、走っても、バントの処理をしても、バットを振っても、どのような運動をしていても、同学年の子どもとは明らかに違った」 また、同紙は大谷の獲得は、「短期的ではなく、長期的な投資」であるから、投手として、それほど多くのイニングを投げていないことも、レッドソックスにとっては魅力的だったという。 新監督のアレックス・コーラを含めて起用法についても話し合いを進めていたそうだ。 しかし、レッドソックスは売り込み努力も実らず、大谷と本格的な交渉を行うところまでたどりつかなかった。同紙は、「レッドソックスは大谷と座って話す機会さえ1度も持つことができなかった。彼の代理人はフロリダでスプリングトレーニングを行うチームではなく、アリゾナでスプリングトレーニングを行うチームと決めていたようだ」と、大谷の争奪戦に絡むことすらできなかったレッドソックスの状況を振り返った。 レッドソックスの編成最高責任者、ドンブロスキーは同紙の取材に「我々が(大谷獲得に)挑戦できるポジションであったら思う」と悔しそうなコメントを残した。 さらにベアードスカウトが「本拠地アナハイムでは大谷を見るために人々は入場券を買い求めている」と話したことを紹介。さらに「レッドソックスも大谷を見るために出かけていく」と表現した。15日の試合が中止になったことで獲得できなかった因縁の投手・大谷と対戦が実現することになったのである。 地元アナハイムだけでなく、ボストンのメディアもファンも大谷との対戦に注目しているようだ。