【処理水放出1年 浮かび上がる課題】漁業 「風評ない」楽観できず 漁場の拡大に影響か
しかし、茨城県側では見通しが立っていない。福島県内の関係者は、漁業資源の管理の在り方などの調整に時間を要しているのに加え、茨城県側が処理水海洋放出の影響を見極めるため慎重になっていると打ち明ける。「魚介類の値崩れが起きるのではないかと心配し、好漁場を分け合う決断を鈍らせているのではないか」と推察する。粘り強く話し合いを進める必要があるとしている。 ◇ ◇ こうした中、県漁連は震災前の漁獲量に戻すことを目標に掲げる。福島第1原発から10キロ圏内での操業再開に向けた議論を始めたが、処理水の海洋放出によって先行きは不透明。風評対策と支援の継続を国に求めている。 ただ、県内外の漁業者の反対を押し切って海洋放出を実施した国との信頼関係は損なわれている。岸田文雄首相は海洋放出時期を決定した際に「たとえ数十年の長期にわたろうとも処分が完了するまで政府として責任を持って取り組む」と言い切った。突然の退陣表明に、漁業関係者は不信感を募らせている。「処理水への不安は長期間、常に付きまとう。国は一丸となって取り組んでほしい」と訴えている。