チャットGPTをしのぐ? 日本発の「サカナAI」ってなんだ?【WBS】
いまあらゆる分野で活用が広がっている生成AI。中でも対話型AIでは、生成AIの代名詞ともなったオープンAIのチャットGPTに対抗してグーグルなどの巨大IT企業が開発競争を繰り広げています。こうしたトップ企業を凌ぐ技術の開発をめざす新たな企業が東京に誕生しました。既にソニーやNTTといった大手企業が出資を決めています。一体どんな企業なのでしょうか。 ソニーが持つAIの開発拠点「ソニーAI」。ソニーではゲームやロボットなどのエンターテインメントだけでなく、家電や自動車などの分野でAIの活用を進めようとしています。「ソニーAI」のミカエル・シュプランガーCOOは「ゲームや家電など様々な事業部とともに、ソニーの将来の成功に貢献するため、最先端の技術を開発しようとしている」と話します。 こうした中、23日行われたのが「サカナAI」との打ち合わせです。 「私たちは『サカナ』が東京にあることに加え、皆さんと新たな技術基盤を協業することを心から望んでいた」(ミカエルCOO) 「私たちの野望は東京から世界クラスのAIラボを立ち上げ、真にグローバルなチームを作ることだ」(「サカナAI」の伊藤錬COO) サカナAIは2023年8月の創業からわずか半年でソニーやNTTなどから総額45億円の資金を調達したと発表するなど、今注目のスタートアップです。ソニーのAI研究を牽引するミカエルCOOもサカナAIに大きな期待を寄せています。 「皆さんがつくるAIは次世代のゲームや体験を生み出す上で重要。これから共に東京から技術発信ができることを楽しみにしている」(ミカエルCOO)
なぜサカナAIはここまで注目されるのか。都内のシェアオフィスにある本社を訪ねました。 「いま全ての努力を結集し、サービス・技術を開発する準備が整った」(サカナAIの伊藤COO) ここに顔を揃えていたのが、サカナAIの社員、わずか10人です。創業者はカナダ育ちのデイビット・ハさんとイギリス人のライオン・ジョーンズさん。いずれもグーグルの研究機関出身です。 ハさんはゴールドマンサックスを経て、グーグル日本法人でAI開発を主導してきた研究者。そしてジョーンズさんはグーグル在籍時代、チャットGPTなどの対話型AIの性能が急速に進化した背景にある基礎技術「Transformer」の仕組みを提案した論文「Attention Is All You Need」を共同で執筆した人物の一人です。 「強みはエネルギー効率に優れていることだ。大手企業が今やっていることとは全く違う」(ジョーンズさん) サカナAIが目指すのは、チャットGPTなどとは違う仕組みの新たな対話型AIの開発です。 従来の対話型AIはコンピュータを巨大化することで性能を向上。その分、巨額の費用を必要としていました。対するサカナAIは、いくつもの小型AIを繋ぎ合わせ、高い性能を持つ仮想AIを作る構想です。これにより必要なコンピュータやエネルギーを削減できるといいます。 「ほかの大手企業の方向性は面白くないと思った。より大きくより大きく作り続けるだけ。絵本の『スイミー』のように、自分たちが小さな赤い魚だったら違うことをする。違う方向に進んでみようと思った」(ジョーンズさん) しかし、なぜ日本で新たなAIを開発しようと思ったのでしょうか。ハさんは「アメリカに行けば100以上のAI企業があるが、日本にはまだスペースがある」と日本にはライバルが少なく、優秀な人材が獲得しやすいといいます。 1カ月ほど前に加わった日本人エンジニアの秋葉拓哉さんは、国内屈指のAI企業Preferred NetworksやStabilityAIなどを経て、転職しました。 「彼らの持っているアイディアも素晴らしい。何か説明したときに返ってくるフィードバックがいい。めちゃくちゃ楽しい」(秋葉さん) 資金調達ができたことで先週始めた人材募集には数日間で300以上の応募がありました。3分の2は海外からだといいます。アメリカのスタンフォード、MIT、ハーバードからの応募も多いといいます。 「われわれは日本に独自のAI、経済圏を持って欲しい。そして独自の経済圏を発展させる手助けをしたい」(ハさん) アメリカのシリコンバレーや中国などがAI開発で先行しすぎていることにはリスクがあるといい、サカナAIが開発中の技術で様々な国の企業が競争に参入しやすくなることを狙っているということです。 ※ワールドビジネスサテライト