中部財界、外国籍の子ども日本語教育を支援 企業に講師派遣呼びかけ、働き手確保に期待
中部経済連合会などの中部財界が、外国籍の子どもへの日本語教育支援に本腰を入れている。ボランティアで運営される教室が多い中、場所の提供や講師の派遣を会員企業に呼びかけるほか、講師と教室を引き合わせるマッチング事業も実施。中部地方の製造業を支える外国人に安心して長く働いてもらうため、子どもがなじみやすい環境を整える狙いがある。 愛知県小牧市にある日本ガイシの社員寮の一室で2024年4月中旬、日本語教室が開かれた。ボリビアやベトナムなど約5カ国の児童や生徒10人ほどが参加。講師が隣に座り、漢字や算数などの宿題をするのを手伝った。 フィリピン国籍のエイドリアン・リブナオさん(18)は約2年前に来日した。学校に通っていないというが「勉強は楽しい。日本の高校や大学に行ってもっと勉強したい」と目を輝かせた。講師を務めた日本ガイシ社員の舟川竜生さん(36)は「子どもと触れ合うのが好きで、自分自身も教えられることが多かった」とやりがいを口にした。
製造業の盛んな中部では、外国人は特に貴重な人材だ。家族で日本に移り住む例が多く、日本語の日常会話が十分にできなかったり、授業についていけなかったりする子どもが増えている。 文部科学省の2023年の調査によると、日本語指導が必要な外国籍の児童・生徒は全国で約5万8千人。この10年で約2倍になった。都道府県別で1位の愛知には約1万2千人おり、主にブラジルやペルーといった南米と、フィリピンなど東南アジア出身者が多い。4位は静岡、8位に三重、9位に岐阜と中部の県が上位に目立つ。 こうした子どもの勉強が遅れないために地域の日本語教室が重要な役割を果たしているが、中経連などの調査によると、愛知県では約8割を民間ボランティアが運営していることが判明した。資金や活動場所の確保は主に行政頼みで、支援には限りがある。 中経連などは教室と会員企業の交流を増やそうと、ボランティア講師を希望する社員に教室を紹介するイベントも企画。2024年1月までの4回で、各回最大45人ほどの社員と5~8教室が参加した。参画する企業も中部電力や第一生命保険など約20社に増えた。日本ガイシは教室までの交通費を支給するほか、ボランティア休暇として休みを取得できるようにした。
中経連国際部の野村一樹部長(62)は「子どもたちが地元企業の人たちとつながりを持ててありがたいという声もある。共生の基盤づくりは大事だ。この活動が(中部以外でも)広まればいい」と話した。