空き家の入居、民間団体仲介 物件を点数化し賃料設定 福島・南相馬
空き家の増加が社会問題となる中、福島県南相馬市で新たな空き家対策が始まった。通常は所有者の意向が強く反映されがちな賃料を、橋渡し役の民間団体が独自に査定し、所有者と入居希望者のミスマッチを解消しようとする試みだ。人口減少や東京電力福島第1原発事故による避難の長期化を背景に、市内の空き家の大半は放置されているのが現状で、関係者は空き家活用の後押しにより移住や起業につなげたい考えだ。(佐藤雄亮) 「物件は出合いが大切。長く住みたかったが…」。市内の空き家に住んでいた40代女性は数度の引っ越しに疲れ、市外に転居した。 引っ越しを重ねた理由は入居期間や設備の交換で所有者と意向が合わなかったためだ。女性は「オーナー(所有者)の事情で制限が異なる。住みやすい環境を整えたいと思っても(借り手が)自分勝手にはできない」と実情を吐露する。 対策を担うのは、空き家と住まいの相談窓口「ミライエ」で、不動産業者や建築士らでつくる団体「南相馬空き家・空き地サポートセンター」が運営する。 ミライエによると、市内で把握している空き家は2182件。このうち同市小高区には25%に当たる545件があり、原発事故以降、10年以上も放置された空き家が約8割を占める。 同市では近年、起業や移住を理由に住宅需要が高まっている一方、賃料は震災後の復興需要で高騰したままの状態が続く。ミライエには昨年度、戸建て賃貸住宅を求める相談が80件超あった。しかし、高額な賃料設定や改修に要する費用負担などで双方の意向に食い違いが生じ、契約を断念する相談者もいたという。 スタッフの熊田めぐみさん(31)は「移住者の熱量は年々高まっているが、紹介できる物件がなかった。移住者を逃している状況を何とか打開したい」と語る。
好みの仕様に改修可
ミライエが手がける賃貸プランサービス「ツクッテ」は、所有者と入居希望者を仲介し、地域相場に左右されない賃料設定や最適な物件活用の提案、マッチングをするのが特徴だ。民間団体が調整役となる取り組みは県内で珍しいという。 ミライエが空き家物件の築年数、広さ、改修規模を査定、点数化した上で、合計点に応じて基本賃料を決める。ペットを飼育できたり、畑があったりする場合は加点される。 物件についてはミライエが借り上げ、未改装のまま貸し出し、入居希望者の意向に沿った形で改修できる「DIY賃貸」として提案。希望者との手続きや賃料の支払いも担う。このため所有者の負担や家賃の滞納リスクが減り、維持費と固定資産税がかかる空き家から収入が生まれるといった利点がある。熊田さんは「空き家という資産を生かし、所有者と借り手のどちらにもメリットが生まれる仕組みにしていく」と意気込む。
福島民友新聞