【ライトノベル最新動向】「薬屋のひとりごと」旋風が落ち着き、バリエーション豊かなランキングに
ベストテンのほとんどを最新刊を含む「薬屋のひとりごと」シリーズが占めた状況も一段落した模様。Rakutenブックスの週間ライトノベルランキング(5月13日~19日)では日向夏『薬屋のひとりごと15』(ヒーロー文庫)が3位、『薬屋のひとりごと14』が8位と2冊のランクインに留まり、9作品・シリーズが並ぶバリエーション豊かなものとなった。 ランキングの1位は、4月からテレビアニメの第3シーズンが始まった佐島勤による「魔法科高校の劣等生」シリーズの最新刊『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー8』(電撃文庫)。サンフランシスコで暴動が起こり、背後に魔法至上主義を掲げる過激組織「FAIR」を率いるロッキー・ディーンが、古代遺跡から入手した大規模魔法が使われていた。沈静化を目指すUSNAのスターズから、日本にいる司馬達也に協力要請が行われ、達也はサンフランシスコへと飛んで事態の収拾に当たる。 暴動はどうにか鎮まり、ロッキー・ディーンも「FAIR」と対立する秘密結社「FEHR」に所属する遠上僚介の活躍で追い詰められたが、結果的には逃げられてしまう。背後には、達也が持つ魔法師として戦略級の能力を危険なものと見なした、スターズとは違ったUSNA内の勢力の画策があるようで、達也や深雪の身にどのような影響が及ぶのかが、今後の展開で描かれていきそうだ。 2位は、川原礫による「ソードアート・オンライン」シリーズの最新刊『ソードアート・オンライン28 ユナイタル・リングVII』(電撃文庫)。サバイバルMMO《ユナイタル・リング》を舞台にしたエピソードで、人界の統治者を自称する皇帝アグマールと、謎多き男・トーコウガ・イスタルに、アンダーワールドの新旧の護り手達が挑んでいく。6月7日発売予定。 4位は、天岸久弥によるこちらも人気シリーズ最新刊『魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~10』(MFブックス)。小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた作品が書籍化されたシリーズで、婚約を破棄された魔道具師のダリヤが商会を立ち上げ、前世の記憶も頼りにして活躍していく姿を楽しめる。 最新刊では、男爵内定のお披露目パーティーに参加してくることになっていたヴォルフが魔物討伐に呼び出され、お互いに相手を心配しながら過ごす日々が綴られる。6月25日発売。TVアニメも7月から始まる予定で、評判によっては「薬屋のひとりごと」シリーズのように、既刊本もランクインしてくることになりそうだ。 第5位は、石田リンネによるシリーズ最新刊『茉莉花官吏伝 十六 待てば甘露の日和あり』(ビーズログ文庫)。御史台に異動してすぐに殺人事件を担当することになった茉莉花だったが、調査は行き詰まり雲嵐が襲撃される事態も起こる。打開を目指して茉莉花は犯人特定に繋がる脚本を書いてもらって、恋する女性を演じるとになるが……。物覚えの良さを活かして官吏となり様々な仕事をこなす少女の活躍ぶりを楽しもう。 6位は、冬原パトラによる『異世界はスマートフォンとともに。30 ドラマCD付き特装版』(HJ NOVELS)。TVアニメも第2期まで作られている人気シリーズの最新刊で、ドラマCD付きの特装版は今回が第4弾となる。 スマートフォンが使える状態で異世界に転生した望月冬夜を主人公としたシリーズで、CDドラマには冬夜に助けられて婚約者のひとりとなった少女スゥシィとの会話から始まり、新しいおとぎ話作りに挑むといったストーリーを収録。57分もの大ボリュームは聞き応えたっぷりだ。 7位は、Kis-My-Ft2の宮田俊哉が書いたライトノベル『境界のメロディ』(メディアワークス文庫)にドラマCDが付いた『【ドラマCD付き特装版】境界のメロディ』(メディアワークス文庫)。小説の方は、メジャーデビュー目前にしながら相方のカイを事故で亡くし、音楽から離れて無気力に生きていたキョウスケの前に、死んだはずのカイが現れたことでキョウスケの止まっていた時間が動き出す。友情があり、音楽に挑む熱情もあってといった感動のストーリーを味わえそう。30位に入った通常版ともども5月24日発売。 9位は、玉響なつめ原作のシリーズを田中てててが漫画化しているシリーズの最新刊『転生しまして、現在は侍女でございます。 8』(アリアンローズコミックス)。王女専属の侍女に転生したユリアが、お仕事や恋に勤しむ展開が繰り広げられた果て、アルダールとの誕生日デートを楽しむユリアが大きく恋愛に目覚めていく。 10位は、Roy『神達に拾われた男 15』(HJ NOVELS)。異世界に転生した竜馬の冒険を描くシリーズの最新刊で、念願だったシュルス大樹海にたどり着いて攻略に挑む中、Sランク冒険者のグレンと知り合い樹海の奥地を目指す。 ここまで、ほとんどが「小説家になろう」など小説投稿サイトの連載から書籍化された作品といった感じで、人気となってアニメ化され原作の人気に跳ね返った作品も多数。コンテストで受賞してデビューといった小説家へのなり方も、その後のヒットの仕方も以前とは大きく変わってきていることを、改めて見せてくれるランキングとなった。 11位以降でもこの傾向は同様で、「薬屋のひとりごと」シリーズが並ぶ中に入った13位の長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活38』(MF文庫J)、14位の十夜『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?7』(SQEXノベル)、15位の理不尽な孫の手『無職転生 ~蛇足編~2』、20位の蘇我捨恥『異世界迷宮でハーレムを 13』(ヒーロー文庫)はいずれもネット発。12位の三上延『ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~』(メディアワークス文庫)だけが、最初から書籍での刊行という状況だった。
タニグチリウイチ