寅さんからサイレントまで 日本最古級の映画館が1年かけ100周年イベント
長野県長野市の映画館「長野松竹相生座・ロキシー」が、会社発足100周年を迎える来年に向け、今後1年にわたり記念イベントを展開します。歴史的な話題作、問題作を相次ぎ上映するほか、キックオフイベントとして12月25日には昭和初期の無声映画をサイレント映画ピアニストの生演奏付きで上映する試みも。同館は「これを機に若者や中高年の皆さんに映画への関心を広げてほしい」と期待しています。 【写真】長野に日本最古級の木造映画館=「時代に即した上映が使命」長野松竹相生座・ロキシー
まず25日から上映会「サイレント×ピアノ生演奏」も
「長野松竹相生座・ロキシー」は120年近く上映を続けている日本最古級の映画館とされ、建物も一部改修を加えながら100年以上たつ歴史的な存在。洋・邦画の配給作品と単館系、ミニシアター系なども幅広く上映しています。 同館によると1892(明治25)年に長野市権堂の現在地に芝居小屋「千歳屋」として建てられ、1897年に活動写真(映画)を初上映。1917(大正6)年の12月には「株式会社長野演芸館」と会社化され、2017年に100周年を迎えます。現在は「長野映画興業株式会社」となっています。
100周年イベントはこの年末年始に「男はつらいよ」の1~5作、来年2月上旬は長野県信濃美術館とのコラボイベント「門前映像祭」で内外で注目されるアニメ作家の作品を紹介。3月は「蒲田行進曲」「時をかける少女」などの角川映画祭。 さらに台湾映画祭(6月予定)、ドキュメンタリー映画祭(7月)、サイレント(無声)映画活弁上映会(秋冬期)、戦争映画特集(7~8月)など多彩な作品を予定しています。 12月25日のキックオフイベントは、斎藤寅次郎監督のナンセンス喜劇「モダン怪談100,000,000円」=1929(昭和4)年作品=、ドイツ映画の傑作「日曜日の人々」=1930(昭和5)年作品=のサイレント映画2作品を午後3時から上映。 ここでは音声の出ない映画の映像に合わせて、サイレント映画ピアニストの柳下美恵(やなした・みえ)さんが、ピアノの生演奏で映像を彩ります。柳下さんは武蔵野音大卒。1995年にデビュー以来、国内外で活動しています。 また、来年2月4日から3月10日までの「日活ロマンポルノ リブート」(R18+)では、5人の監督のロマンポルノ作品を1週間ずつ上映しますが、毎週火曜日は「女性オンリーデー」として男性の入場は不可とします。 ロマンポルノを女性だけで見てもらう狙いについて同館の田上真里支配人は「女性もロマンポルノには関心があるはずなので、男性の目を気にしないですむ環境を設定した。映画にはいろいろな表現があり、ドラマのあるロマンポルノもある。偏見を持たずに見ていただきたい」と話しています。 最近の映画事情について田上支配人は「若者でも『仁義なき戦い』や寅さんのファンはいる。都会で多くの作品を見てきた若者たちが映画に新鮮な魅力を感じて長野など地方でも映画館に足を運ぶ傾向もある。また中高年や高齢者の映画人気も根強い。連続したイベントで映画への関心がもっと高まればうれしい」と話しています。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説