大学中退、4年間挑んでも届かなかった吉報 夢諦め日本卒業、台湾プロ野球で新たな一歩へ 独立リーグ屈指のエース決意
BCリーグ信濃グランセローズの鈴木駿輔投手、台湾の楽天モンキーズへ
ルートインBCリーグ信濃グランセローズを今季限りで退団し、来季は台湾プロ野球の強豪、楽天モンキーズに活躍の場を移す鈴木駿輔投手(25)は、NPB(セ・パ両リーグ)入りという幼い頃からの夢に区切りをつけ、「自分の力を認めてくれた」海外球団で次の一歩を踏み出す決意をした。BCリーグ屈指の右腕として鳴らしたが、4年続けてドラフト会議での指名はなく、会議翌日にオファーを受けた楽天モンキーズへの入団を即決。新たな舞台での飛躍を誓っている。 【写真】台湾の楽天モンキーズ入りを表明する鈴木
甲子園でベスト8入りに貢献、大学中退しNPB挑戦へ
東京都出身。小学1年で野球を始め、小学校の卒業文集には「プロ野球選手になりたい」と記した。高校は両親の古里、福島県の甲子園常連校、聖光学院に進学した。当初は「来るところを間違えた」と周囲のレベルの高さに驚いたが、目の前の練習に全力を注ぎ、2年の秋に中堅のレギュラーを獲得。2016年、10年連続夏の甲子園出場が懸かった3年時の福島大会を制し、甲子園では「4番・投手」としてベスト8入りに貢献した。 青山学院大を中退し、BCリーグの福島に2年在籍した後の21年、信濃に入った。信濃では20年の育成ドラフトで赤羽由紘選手(松本市出身)と松井聖選手がヤクルトから指名されていた。「信濃なら(ドラフト指名の)チャンスはある」。そう考えての移籍だった。
独立リーグで投手部門3冠、「誰よりも結果を残したのに…」
移籍2年目に信濃に加入した荒西祐大投手兼任コーチ(31)の助言を受け、成長が加速した。最速150キロ超の直球を力任せに投げる投球スタイルを見直し、NPB入りへの思いが強すぎるあまり、独り相撲になりがちだった精神面も徐々に改善。11勝、防御率1・76、94奪三振で北地区の投手部門3冠を達成した。しかし、NPB球団に調査書提出を求められて3年目のその年もドラフト指名はなかった。「誰よりも結果を残したのに…」 そのオフ、海外挑戦を理由に信濃を退団したが、交渉が進まずに断念。年明けに信濃に再入団が決まった時、「僕のことをいいように思わない人もいると思う」と話した。そんな重圧も受け止めながら臨んだ今季はけがで出遅れたが、リハビリ時の体づくりが奏功して球速が上がった。北地区最多の三振を奪い、2年続けて11勝を挙げた。それでもドラフト会議での吉報は届かなかった。 その翌日に受けた楽天モンキーズからのオファーについて、自分を必要としてくれることがありがたかった―と振り返り、「NPB入りの夢は一区切り」と割り切った様子で話す。
「日本に自分の名前が聞こえるように頑張りたい」
BCリーグに在籍した5季の成績は通算42勝15敗、防御率3・12。遠回りをしたけれど、「段階的に成長できた」という独立リーグでの経験は決して無駄ではなかったと思っている。「独立リーグで一番(いい投手)という自負がある。それに恥じない結果を台湾で残したいし、日本に自分の名前が聞こえるように頑張りたい」と力を込めた。