「4年魚」の大幅減でサケ不漁 2013年の水温急変が影響との見方も
今年のサケ漁が不振です。水産研究・教育機構の北海道区水産研究所によると、10月31日時点における全国のサケ来遊数(沿岸での漁獲数と、人工ふ化用などで河川で捕獲される数の合計)は、前年同期の69%、平年の57%にとどまる2532万尾と、平成に入って最も少ない状況です。何が起きているのでしょうか。 ウナギ完全養殖の実験成功から6年、いまだ市場に出回らない理由とは
毎年来遊するサケの大半は、4年前に生まれた「4年魚」と5年前に生まれた「5年魚」です。平年で、全国のサケ来遊数の約75%を占める北海道において、10月31日時点のサケの年齢別来遊数を同研究所が推定したところ、2011年生まれの「5年魚」が60%(1424万尾)、2012年生まれの「4年魚」が36%(864万尾)となり、両方で96%を占めました。 この5年魚と4年魚の来遊数を前年と比べると、5年魚は前年同期の150%と前年を大きく上回っていますが、4年魚については、前年同期の39%と大幅に減少しています。同研究所の担当者は、「4年魚が少ないのが不漁の原因」と指摘します。 なぜ、4年魚の来遊数が少ないのか、原因はまだわかっておらず、同研究所で調査中です。現時点で、4年魚が海に出た2013年の水温に原因があるのでは、との見方が出ているそうです。 同研究所が、2013年における北海道付近からオホーツク海にかけての海水温を調べたところ、5月いっぱいまでは平年よりも海面水温が1~2℃下回る一方、6月に入ると急変し、逆に平年よりも1~2℃高くなる傾向が見られるそうです。
この季節、海に出たサケの稚魚は、オホーツク海へと移動します。その際に起こった海面水温の急変が、稚魚の生存率に影響を及ぼした可能性があるかもしれない、というのです。もしも成魚ならば、たとえ海面水温が高くなっても、水温の低い深さのところまでもぐれますが、稚魚は移動能力が未発達で成魚ほど深くもぐれませんから、水温変化の影響をもろに受けてしまいます。 水温の急変がなぜ起きたのかは、まだわかっていません。今後、同研究所ではさらに調査および検討を続けて、来夏をめどに結論を出したい考えです。 来年はどうなるのでしょう。担当者によると、今年の4年魚が来年の5年魚になりますので、5年魚の豊漁は期待薄とする一方、来年の4年魚については現時点で予想が困難としています。次のシーズンのサケ漁獲量は、来年の4年魚の来遊量次第と言えそうです。 (取材・文:具志堅浩二)