有効求人倍率って何?/木暮太一のやさしいニュース解説
―――「え、そうなの??」 自分の経験を考えても、必ずしも仕事を探す時にハローワークは考えません。というよりむしろ、ハローワークには行かず、ネットの求人サイトで探す、という方が多くなっていると思います。 でもこの「応募者」は、有効求人倍率に反映されません。これからの時代、この指標の見直しが必要になると思います。
―――「で、さっきの『有効』の話は?」 ハローワークを通じて、人材を募集したり、仕事を探す場合、通常はその案件の期限が「2カ月」とされています。 人材を募集したい社長さんは、ハローワークに求人募集を出します。それがハローワーク内で、「こんな仕事があります!」と告知されるんです。でも、一生その募集がハローワークに登録されているわけではありません。2カ月たったら消えます。この2カ月間が「有効な求人期間」となります。 これが「有効」の意味です。要するに、「何十年も前からの求人案件をすべて累積して計算しています」ということではなく、「いま本当に募集が出ている案件を数えています」ということです。
―――「なるほど、そういうことね。でも、いずれにしても有効求人倍率が上がるのはいいことなんだよね?」 「良いか、悪いか」と聞かれれば「良い」です。ただし、これが日本経済の実態を正確に表しているかというと、そうではないと思います。 さきほど解説したように、これは「ハローワークを通じて」の労働環境を表しています。しかし、ネットや人材紹介企業で仕事を探している人がどんどん増えています。特に若い世代や、オフィスワーカーは、あまりハローワークには行きません。
―――「うん、そんなイメージだね」 新規の求人をたくさん出しているのは、自動車や電気機械などの製造業、土木・建設業のようです。これらの業種は、円安効果によって輸出が増えたり、消費増税前の駆け込みで需要が増えているからです。 ただこうした求人の大半は「非正規」と見られています。正社員ではないんですね。一時的に上がっても、消費増税後に需要が減ったら、募集も減るのでは?と懸念する声もあります。 いずれにしても、有効求人倍率という指標を見て一喜一憂するのではなく、まずその指標自体が世の中の状態を正しく反映しているか? を考えるべきです。そのうえで、世の中のためになる施策をどんどん実施していただきたいと思います。 ----- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。