「ご神木」30本、樹皮が剥がされる被害 建材として無断で持ち去られたか 「罰当たり」「枯れないか心配」と住民
長野県内にある二つの神社で、境内にある「ご神木」のスギやヒノキなど少なくとも計約30本が樹皮を剥がされる被害に遭っていたことが21日、分かった。神社関係者は屋根用の建材などとして無断で持ち去られた可能性があるとして県警に被害届を提出。高さ10メートル以上にわたって剥がされた巨木もあり、住民たちは古くから親しまれてきたご神木が枯死しないか心配している。 【写真】樹皮が剥がされた古城八幡社の「ご神木」のヒノキ
阿南町富草の古城八幡社(ふるじょうはちまんしゃ)境内では11月11日、近くに住む三浦善文宮司(46)が、樹齢数百年とみられるご神木を含む20本以上のヒノキの樹皮が剥がされているのを見つけた。根元から10メートル以上剥がれたものもあった。近くに剥がされた樹皮は見当たらず、真新しい木くずが残っていたという。同日、阿南署に被害届を出した。
三浦宮司によると古城八幡社は、過疎化と高齢化で10年以上前から祭りが途絶えており、普段は人通りもない。町教育委員会が日常の管理や清掃を担っており、町教委の宮下善太さん(40)は「見回りを強化し、樹木医に相談しながら木々の管理を検討したい」と話す。
一方、飯田市羽場権現の元山白山神社境内では今年3月、鳥居近くにあるご神木のスギ2本の樹皮が剥がれているのを総代会員が見つけた。当初は風などの影響とみていたが、その後、同じ状態のスギやヒノキが少なくとも6本見つかった。周囲に樹皮が落ちていなかったことなどから10月に飯田署に被害届を提出。防犯カメラを設置した。
ヒノキやスギの樹皮は屋根をふく建材として使われる。被害を受けた木の写真を見た全国社寺等屋根工事技術保存会(京都市)の大野浩二会長(58)は「刃物を使わないともっと深く剥がれるはず。野生動物による可能性は低い」と指摘。「近年は文化財修繕の用途に限られているが、需要が多かった50年ほど前は盗難の例もあったと聞く」と話す。
三浦宮司は「過去には樹皮を屋根材として有償で譲ったこともあった。正当な対価を得られれば祭りの復興に充てられたのに」と憤る。元山白山神社総代長の大蔵光彦さん(70)は、「みんなで守ってきたご神木の樹皮を勝手に剥いだなら罰当たり。枯れてしまわないか心配だ」と肩を落とした。