BUCK-TICK、5人のパレードは続く 櫻井敦司急逝後初ライブ『バクチク現象-2023-』徹底レポ
BUCK-TICK、アクシデントを乗り越えた観客と5人の一体感
攻撃的なSEからパーカッシブなインストに乗せて櫻井の声が響いた。「ドラムス ヤガミ・トール、ベース 樋口豊、ギター 星野英彦、ギター 今井寿、ボーカル 櫻井」。5人の声が重なるコーラスで「Memento mori」へ。特効の火球が舞い、映像のセンターにいる櫻井が手に持ったライトで照らしたかのように客席が照らされる。ケチャ風のコーラスを入れながら〈人生は愛と死〉と歌うこの曲は、今のBUCK-TICKにとって必要な曲なのかもしれない。〈REMEMBER TO DIE〉と最後のコーラスを今井は力一杯歌った。アンコールで「人生は容赦ねえな」と言ったのは、この曲への思いだったのだろうか。「夢魔 -The Nightmare」のBUCK-TICKらしい重厚な祝祭感の中、今井はこれでもかとノイジーなギターを鳴らし、オーディエンスがステージに向けて差し出す手が靡く。 「今日はありがとうございました」と今井が振り絞るように言った。重責を務めた安堵の声だった。本編ラストは「DIABOLO」。芝居がかった曲が今宵の別れを告げる。スクリーンに一瞬4人のリアルタイムのカラー映像とセンターの黒い画面が現れた時、存在と不在の境界線が曖昧になった気がした。 アンコールに応えて4人が登場。いつものように今井がスマホで会場内を360度撮影し、それを樋口が撮影する。ヤガミのドラムソロから軽やかな「STEPPERS -PARADE-」を櫻井の声とともに演奏した後にMCタイムになり、冒頭に書いたように4人それぞれが想いを語った。そして「ユリイカ」は力強い演奏とともにスクリーンに櫻井のアップが映され、5人が再び揃ったように思えた。ところが櫻井の「皆さん自分を愛しましょう」とのコメントに続いた「LOVE ME」のイントロで演奏と映像が合わずやり直すことに。再び演奏を始めても櫻井の歌、映像が合わない。虚しくも会場には4人の演奏だけが鳴り響く。曲も後半になり、このまま終わってしまうかと思われたが、櫻井の音声、映像が復活。あたかも櫻井からのプレゼントのようにラストのサビを観客は共に歌うことができた。BUCK-TICKは、やはりこの5人なのだと櫻井が示したように思えた。櫻井が「ありがとうございました、また会いましょう、また会いましょう、必ず」と言う声が流れ、ステージを降りる姿が脳裏に蘇った。 「ここにいる子供たちへ」と櫻井の声で始まった「COSMOS」。一輪のコスモスの映像から天井にも花びらが舞い、艶やかな櫻井の歌声が広がっていく。〈君に似てる〉〈愛だけがそこにある〉と歌詞が浮かび上がり、オーディエンスのコーラスが重なる。BUCK-TICKと一つになって歌うオーディエンスが画面に重なった。続いた「名も無きわたし」の〈名も 無い わたしは/あなたと 出会いました〉というフレーズは、BUCK-TICKと出会えたことを歌っているように思えた。 セカンドアンコールは、櫻井の「行こう、未来へと!」の声で始まった「New World」。スクリーンに映された5人の映像は全員がカラーになり、BUCK-TICKは未来へと歩み出した。大任を果たした4人はホッとしたように緊張を解いた様子。櫻井の「どうもありがとう、ありがとうございました」の声で曲は終わりに向かい、今井がジャンプして締め最後のノイズギターを鳴らした。そして今井は「ありがとう、また会いましょう」とメンバーと共にステージを降りた。 ステージのスクリーンで告知されたのは「2024年12月29日 日本武道館 公演開催決定!」。パレードは続くのだ。私は今井が言った「(櫻井が)いなくなったことより、生きていたこと、存在していたことを大事にしてください」という言葉に心打たれた。それこそがBUCK-TICKが続く力なのだ。そのために冒頭に書いたように4人はそれぞれの思いをしっかりと語ったのだ。星野に倣ってもう一度言おう。パレードは続く、この5人で。 ※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年1月15日11:34、リアルサウンド編集部) 誤:「2024年12月24日 日本武道館 公演開催決定!」 正:「2024年12月29日 日本武道館 公演開催決定!」
今井智子