ファンタジー世界で「釣り」をするRPG『Sea Fantasy』は「釣りゲー」の平和なイメージを覆す作品だった。バトルとしての「釣り」や「ボス戦」を通じて「世界の滅亡」を阻止する冒険へ【BitSummitDrift】
今回紹介するのは、愛知県に拠点を置くインディゲームスタジオ、METASLAが手掛ける「釣り」をモチーフにしたRPG『Sea Fantasy』だ。 【この記事に関連するほかの画像を見る】 美しいドットで描かれるほのぼのとした自然、釣りを楽しむ主人公、本作は一見すると平和な農場系シム……なのだが、その正体はなんと「釣りで世界を救うRPG」となっている(!?)。 釣りに特化したゲームは古今東西数あれど、ドットグラフィックを採用し、なおかつバトル要素も楽しめるRPGは珍しい。釣りに特化した本作のゲーム体験とはどのようなものなのか? ありがたいことに、2024年7月19日~21日にかけて開催された日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit Drift」で本作のデモ版を遊ぶ機会を頂いた。この記事では実際のプレイで得られた感想や、本作の全体像について紹介していこう。 取材・文/植田亮平 編集/りつこ ■「釣り」に完全特化したRPG。「タイミング合わせゲーム」をRPGらしくブラッシュアップし、遊びごたえのある乱獲バトルに 冒頭で書いた通り、『Sea Fantasy』は釣りに特化したRPGである。 とは言っても、どのように特化しているのか分かり辛いかと思われる。まずは肝心の「釣り」部分について紹介しよう。 釣りのシステムは、ゲージを使った「タイミング合わせゲーム」にRPGの体力要素を追加したシステムに仕上がっている。 画面中央に現れるゲージが「クリーンヒット」となるタイミングでボタンを押せば、敵となるシーアズ(作中に登場する魚のような生物)にダメージを与えられる。最終的にシ―アズの体力をゼロにすれば釣り上げ成功。 逆に、ヒットから外れた位置でボタンを押したり、制限時間以内にボタンを押せなかった場合、こちらがダメージを受けてしまう。体力がゼロになればゲームオーバーだ。 幸い今回のデモではゲームオーバーにならなかったが、このゲームオーバーのなりにくさも、ある意味RPGらしい仕様だ。 むしろ驚いたのは、「タイミング合わせゲーム」の部分だ(正式名称は違うかもしれないが)。このシステムは、どちらかと言えばミニゲームとしてよく見る釣りの形態であり、メインのゲーム体験となっている点は興味深い。 「リアリティのある釣りゲームをやりたい」というよりも、「『Stardew valley』の釣り部分をずっとやっていたいな~」という方に非常に刺さるゲームかもしれない。バトル部分のコンセプトとしては後者のように私は感じた。 もちろん、それは今作がミニゲーム然としているという話ではない。メインシステムに据える上で、本作は釣りの体験にいくつかのブラッシュアップを行っている。 ブラッシュアップを一番感じたのは、「魚の喰いつき」についてだ。 始めのプレイで私は釣り糸を魚影の目の前に投げていたのだが、全然魚が喰いつかない。すると開発者の方から「魚影に直接投げてみてください」とアドバイスが。その言葉通りに直接魚影に釣り糸を投げてみると、なんと、いきなり魚との釣りバトルが始まったのだった。 そう、このゲームには喰いつきまでの駆け引きが存在しないのである。今まで私の中で釣りゲームと言えば、魚がルアーに寄ってきてチョンチョンと3回くらいちょっかいを出すのが当たり前だと思っていたが、このゲームではそういった「魚側を待つ時間」が無い。 ひとたび魚影を見かければ、直接釣り糸を投げてバトルに挑み、RPGで雑魚を倒すように次々と乱獲していく。それが、このゲームのジャンルがRPGたる所以である。 「魚が喰いつくのを待つ」ことは釣りの醍醐味ではあるが、RPGにとっては余計なストレスである。釣りにおいてテンポを加速させるゲームデザインは、非常に効果的だと感じた。 ■釣りをするほどレベルアップ。JRPGを下敷きにしたユニークなシステム 本作がRPGであることを改めて確認したところで、釣りそのものとは別の部分にも目を向けてみよう。 まず、この世界ではRPGの装備の概念がほとんどど「釣り具」に変換されている。実際の釣りでも装備は人によって変幻自在だが、このゲームにおいても釣り具はロッド、ルアー、餌、釣り針など細かくカスタマイズできる。 また、レベルアップに伴うパラメーター変化も、釣りに特化したものになっている。 パワー、ガッツ、テクニック、視力、幸運という5つのパラメーターが用意されており、ステ振りはレベルが上がるたびに行える。 ちなみに一番下にある「幸運」は、シ―アズを釣った際に手に入る素材に関連している。敵を倒すとお金が貰えたり、素材がドロップするというのはRPGらしい。 このように、本作では「釣りそのもの」以外の多くのシステムが、恐らくJRPGを下敷きにして作られている。 ■ほのぼのした「釣りゲー」ではない。世界の滅亡を掛けた冒険で「ボス戦」「クラフト要素」も楽しめる ところで、JRPGにとって最も欠かせない「ストーリー」はどのようになっているのか?その全容は今回の試遊ではうかがい知れなかったが、Steamストアページには巨大な2体の龍が向かい合う様が映し出されている……。 デモ版では主人公と親友が地元のヌシであるシ―アズを求めて旅に出る、というようなストーリーが展開されていたが、恐らくこれはお話全体から見ればマクラもマクラ。きっと物語終盤までに二転三転し、最後は世界を揺るがす大きな出来事に巻き込まれていくことだろう。 本作のストアページには実際に、 「これは平和な釣りゲームではありません。世界の滅亡が迫っています...。」 と書かれている。 名前にファンタジーと付いているので当然と言えば当然なのだが、『Sea Fantasy』はかなり壮大な物語となりそうだ。これが釣りによって、どのように展開されるのだろうか。 このほかに、Steamストアページによると「釣り」を軸にしたボス戦や広大な世界の探索、素材を活用したクラフト要素など、この度の試遊では触れられなかったコンテンツも多数存在するという。 そういったコンテンツも楽しめる体験版がSteamストアページにて配信されているため、興味を持った方は実際に遊んでみよう。 本作はビジュアル、ゲームプレイ、ストーリー、どれ一つとっても他の部分が予想できない、ギャップに満ちたゲームに仕上がっている。 逆に言えば、ピクセルアートで描かれる大自然が好きな方、ゲームの釣り要素がとことん好きな方、あるいは壮大なストーリーを持ったRPGが遊びたい方など、このゲームへの入口は無限大である。どのような部分に食いつくかはゲーマー次第。釣りで進んでいく異色のRPGは要チェックだ。
電ファミニコゲーマー:
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