【第1四半期レビュー】主要通貨の中で一人負けだった日本円、勝てる通貨はトルコリラとアルゼンチンペソという現状
2024年1~3月期を振り返ると、日本円は対ドルで6.2%下落しており、先進国の主要通貨「G10」の中で最も大きな下落幅だった。 名目実効相場(NEER)を見ても円の一人負けは鮮明で、3月には市場最安値を更新した。 この事実が示しているのは「為替市場で円が敬遠されている」という事実。FRBが利下げしたとしても、円高方向の動きは「長期円安局面の小休止」に過ぎない。 (唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト) 【著者作成グラフ】主要通貨のスポットリターン。対ドルでは、G10通貨で最も大きな下落幅 4月第1週を振り返ると、米地区連銀総裁発言を受けたFRB(米連邦準備理事会)利下げ観測の後退、日銀の植田総裁インタビューを受けた日銀追加利上げ観測の台頭など、ドル/円相場を押し下げる材料が相次いだものの、結局、本稿執筆時点では151円台後半で推移している。 ちょうど1~3月期を終えたところなので、円相場の動きを総括してみたい。 まず、円は対ドルで6.2%下落しており、これは先進国の主要通貨「G10」の中で最も大きな下落幅だ。2022年、2023年、2024年初来の変化率を累積しても、円ほど負け続けている通貨はない(図表(1))。 【図表(1)】 厳密にはトルコリラとアルゼンチンペソは円よりも累積下落幅が圧倒的に大きいが、もはやその2通貨くらいしか比較対象がないという実情にある。 一方、名目実効相場(NEER、Broadベース)に目をやると、円は年初来で4.6%下落しており、3月20日時点では74.3と史上最安値を更新している。
■ 今の円安局面は日米金利差が理由ではない! ちなみに、ドルは+2.4%と主要通貨では最も大きな伸び幅だが、英ポンドやユーロも上昇しており(それぞれ+1.6%、+0.2%)、G7通貨で円と共に下落通貨となっているカナダドルでも▲1.3%にとどまっている。 こうした状況を踏まえる限り、ドル高の結果として円が大幅下落を強いられているという解釈は難しい。昨年からの値動きも踏まえれば、やはり「為替市場で円が敬遠されている」というイメージは抱かざるを得ない(図表(2))。 【図表(2)】 これまで幾度となく繰り返してきた事実だが、今の円安局面は「ドル高の裏返し」ではない。よって日米金利差を主軸とした解説は【いかに相関があろうと】適切ではないというのが筆者の基本的立場である。 主要貿易相手国通貨に対して広く、あまねく売られているからこそNEERが下がっているのであり、それを日米金利差という二国間の変数だけで説明するのは無理がある。