気候風土に合わせた匠の技が育てるこうじの魅力 違いが分かる人の本格焼酎 文化遺産登録を機に届け「上質を知る」世界の愛飲家へ
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、鹿児島で製造が盛んな本格焼酎をはじめ、日本酒、泡盛などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産へ登録するよう勧告した。文化庁が5日発表した。 【動画】これが焼酎の製造工程
日本の「伝統的酒造り」は、「こうじ菌を使った発酵」を日本酒や焼酎、泡盛などの共通の特色とする。杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)が築き上げてきた技を受け継ぎ、各地の気候風土に合わせて発展してきた。 焼酎を含む日本の酒類は、こうじの働きででんぷんを糖に変える過程(糖化)と、酵母によるアルコール発酵が同時に進む「並行複発酵」が特徴の一つ。蒸した穀物の一粒一粒に菌を生やしたバラこうじを使うのは独特とされる。焼酎は約500年にわたり、並行複発酵でできたもろみを蒸留し造られてきた。 焼酎用種こうじ製造で全国トップの河内源一郎商店(鹿児島市)の山元正博会長(74)は「こうじには糖化のほかに酵母を強化する働きもあり、焼酎造りでも重要な役割を果たす。登録は日本のこうじ文化が世界的に認められたということ」と捉える。 県内では芋が主原料の薩摩焼酎、奄美群島限定生産の奄美黒糖焼酎を中心に本格焼酎の銘柄は数多い。杜氏や蔵人がこうじ造りや一次・二次仕込み、蒸留といった各工程を手がける。
NPO法人かごしま焼酎マイスターズクラブ理事長の鮫島吉廣鹿児島大学客員教授(76)=焼酎学=は、技術継承に取り組む保持団体「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」顧問を務め、ユネスコ登録へ尽力してきた。 「手作業の技が受け継がれ、現在の製造現場を支えている。鹿児島の風土や歴史から生まれ、独自に発達してきた焼酎の魅力を、まずは地元や国内で知ってもらうのが大事」と強調する。海外市場では韓国の蒸留酒ソジュと焼酎は混同されがちだ。登録されれば違いを明確に打ち出せるなど対外的発信への貢献にも期待を寄せた。
南日本新聞 | 鹿児島