LVMHが先導する「持続可能」なラグジュアリーのあり方 五輪の舞台から世界へ発信 伝統と革新
7月26日に開幕するパリ五輪・パラリンピックで、フランスの高級ブランドグループ「LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン」はパートナー企業に名を連ねる。グループの宝飾の老舗、ショーメはメダルを制作し、革・服飾のベルルッティは開会式でフランス代表選手団が着るユニホームを手がけた。 【写真】フランス代表選手団がパリ五輪・パラリンピック開会式で着用するユニホームはベルルッティが手がけた 「メダルはその一部に、エッフェル塔の改修に伴い廃材となった鉄が再利用されています。ユニホームには、LVMHの環境基準に沿って認定された綿やウールを素材を使っています」 LVMHのエンバイロメント デピュティ(環境担当副)ディレクター、アレクサンドル・カぺリさんは、そう説明する。 パリ五輪は、温室効果ガス排出量を過去の大会平均の50%に抑えることを目標に掲げる。かつてない「エコ五輪」はLVMHにとって、持続可能なラグジュアリーのあり方を世界に示す舞台となる。 ■環境への取り組みは以前から 4つのテーマに注力 LVMHはワインや服飾、化粧品など75のブランドを抱える。環境への取り組みを本格化したのは、約30年前。2021年には新戦略「LIFE(ライフ)360」を発表した。循環型経済▽トレーサビリティーと透明性▽生物多様性の保護▽気候変動に対する取り組み-の4テーマを柱とする。 「循環型経済」では、生地や皮革の端切れ、未使用製品のリサイクルを進める。修理サービスにも重点を置く。 「トレーサビリティー」では、ダイヤモンド鉱山や農場などでの原料調達から製品化まで、過程を把握。人権侵害や環境破壊が供給過程で行われないよう気を配り、情報を消費者と共有する。南米アマゾンやアフリカの森林再生も重要な課題。NGO(非政府組織)や生産者と積極的に連携を進めている。 カペリさんは「シャンパンやワインの原料となるブドウ、香水に使われる花の栽培は、気候変動の影響を直接受ける。環境への取り組みは切実な課題なのです」と説明する。 循環型の代替素材を探そうとすると、製造過程やデザインに影響が出ることもある。「みんなの理解を求めるのに苦労したこともありますが、今は若手デザイナーほど取り組みに熱心です。この20年で意識は大きく変わった」という。