検証――フリマサイトで違法な苗の出品は減ったのか
日本農業新聞「農家の特報班」が報じてきた、フリーマーケットアプリ上で種苗法違反の無断増殖とみられる苗が売られている問題。報道後、アプリの運営会社や、多くの品種を育成した農研機構が対策を強化したが、違法な出品は減っているのだろうか。現状を探った。 記者はまず、アプリ大手のメルカリの出品状況を調べた。過去の取材時に違法出品が多かったのは、苗を増やすのが簡単なサツマイモやイチゴ。サツマイモは時期外れのため、イチゴ苗を検索。無数のイチゴ苗が表示されたが、品種は「とちおとめ」や「紅ほっぺ」など、育成者権の期限が切れた品種が目立つ。これらの苗は増殖した苗を譲渡・販売しても種苗法違反には当たらない。 記者は12月上旬、過去1カ月分の出品を確認。品種名を明示していない苗や、出品者も品種名が分からないとする疑わしい苗は複数あったが、明らかな違反は、カネコ種苗の「ももいろほっぺ8号」の苗1件だけだった。 今年4月ごろに検索した際には、「あまおう」や「桃薫」など、無断増殖・販売を禁じられた登録品種のイチゴ苗が堂々と売られていた。記者が見る限り、現状は改善したような印象がある。
メルカリは「大幅減」と説明 警告表示が効果?
メルカリの運営会社に現状を聞いてみた。すると、出品数の具体的な推移は明かされなかったが「違法な疑いのある種苗の出品数は昨年より大幅に減った」との説明があった。 農水省で違法な種苗の流通防止に取り組む知的財産課も「特にこの2、3カ月、違法な種苗が減ったと感じる」という。効果が大きいとみるのが、アプリ各社が今秋から始めた出品前の警告表示だ。違法の可能性がある種苗を出品しようとすると警告画面が出る。法律を知らずに違法な種苗を出品してしまうケースが減ったとみる。 農研機構にも聞いた。同機構は、8月からフリマサイトの監視体制を強化。8月当初と比べると「違法が疑われる種苗の数は減少傾向にあると感じる」という。11月に登録品種のイチゴ「東京おひさまベリー」の苗を無断でフリマアプリで販売した女性が書類送検された事件のニュースが、種苗法の周知や違法な販売に対するけん制につながったとみる。(金子祥也)
日本農業新聞