「悪道長」第一歩? 彰子入内がもたらすものは…「仰せのままに」からの覚醒も待ち遠しい【光る君へ】
柄本佑が一瞬見せた、道長の暗い光
今後道長が定子に対しておこなっていく仕打ちや、このあとも娘たちを次々に後宮に送り込んでいくという史実を考えると、さすがにこれは道長が聖人君子すぎやしないか? と思わなくもない。 しかし今回は、ちょっと「悪道長」の片鱗をチラリと覗かせる箇所があった。彰子の入内を、定子の子どもの産み月にぶつけるという策だ。この理由は特にドラマでは明かされなかったが、このとき柄本佑が一瞬見せた、暗い光を見逃さなかった視聴者も多いだろう。 ここまでの道長の出世は、兄たちをはじめとするほかの有力貴族たちがことごとく病死するとか、ライバルが自滅するとか、運の強さにめぐまれたことは否定できない。姉の詮子に「これからは血を流せ」と発破をかけられたこともあり、ここから父・兼家(段田安則)のように、多少なりとも「私利私欲」が芽生えていくのだろうか? そうなった暁には、まひろはどのような反応をするのか? というのが、早くも気になるところだ。 そしてもう一つ気になるのが「仰せのままにbot」と言われるほど、「我」というものが一切見えない彰子のキャラクターだ。晴明には「この国を背負って立つ」と言われ、実際に道長との対立も辞さないゴットマザーへと成長することになるのだけど、この時点では道長ならずとも、その片鱗はまったく見えない。彼女の覚醒にまひろが大きな影響を与えるのはまず間違いないだろうけど、残念ながら出会いはもう少し先。その化学反応が生まれるときを、楽しみに待ちたい。
度々話題になるBGM、今回も攻めていた
さらに今回は、まひろと藤原宣孝(佐々木蔵之介)の結婚生活や、まひろと道長衝撃の再会など、SNSが盛り上がる要素がふんだんに散りばめられていたが、最大瞬間風速的に盛り上がったのが、彰子の裳着の儀のBGMだった。 一条天皇の即位の儀のとき以来となる、重厚なパイプオルガンの調べに、SNSでは「めでたい裳着の儀の場だというのに、この禍々しい音楽はどうだ」「『カリオストロの城』の婚礼シーン思い出した」「『ゴッドファーザー』の洗礼式みたい」と、そのミスマッチ具合が話題となっていた。 以前のコラムでも言及したけど、ラブシーンでエレキギターが鳴り響くとか、プロポーズで中東風のコミカルなズンドコ音楽が流れるとか、これまでの大河では一番ではと思われるほどBGMのクセが強いのが『光る君へ』の特徴。 しかし今回のパイプオルガンは、この「裳着の儀」が祝福というよりも、彰子がいけにえとなる第一歩という悲壮感が前に出てくる結果となったので、ギリギリナイスチョイスだと言えるだろう。これからもツッコミ一歩手前ぐらいの、絶妙な選曲に期待したい。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。次週の7月7日は、都知事選開票速報のために放送休止。7月14日放送の第27回『宿縁の命』では、石山寺で思わぬ再会を果たしたまひろと道長の物語と並行して、定子の出産と彰子の入内が描かれていく。 文/吉永美和子